多くの選択肢の中から一つの選択をする力(トレード・オフ)について考えてみたい。
情報が十分共有され、人々が自由に行動できる社会において、全てのものごとは均衡する。そんな恵まれた世界で生活する我々には、均衡を打ち破る力が求められる。そのような力が、積み重なり、相互に作用しあって、新たな均衡が生まれる。
駅から徒歩5分の距離にあって、外見的にはほとんど同じに見えるオフィスビルAとBがあるとしよう。オフィスを借りるために賃貸料を調べるとAは月50万円、Bは月40万円である。条件が同じであれば安いほうが好ましいだろう。コスト削減や効率が求める企業では当然である。
しかし、同じような環境にありながら価格が安いのは、通常、何か理由があるからである。例えば、賃貸料の安いBは、高速道路のとなりにあってAに比べて走行する車の音が気になる。あるいは、AもBもエレベーターを完備しているが、Bは2階まで階段を上らないとエレベーターに乗れなかったりする。
どんな条件よりも費用が最優先であればB、静かな環境で働き、顧客と落ち着いて商談する必要があればA、足の不自由な社員がいるのであればAを選択することになるだろう。
全てが整っているようなものは、価格が非常に高いものである。個人にとって「完全」であることは通常ない。そんな個人にとっては不完全であるが、全体として最適と言えるような均衡した世界で我々は生活している。
一つの選択は、異なった価値観、別の考え方をする相手には受け入れがたいものだったりする。
一つの選択に対して、批判したいのであれば、いくらでも批判ができるだろう。重要なのは、選択によって幸福を最大化する一方で、選択する代表者、責任を負う責任者にとって損失の可能性や批判など負の圧力を最少化することであって、負の圧力をゼロにすることではない。
他者の意見を聞くことや自分の行動を反省することは重要である。ある選択によって自分がおかすリスク、しかも、常に意識しているようなリスクを、他者から改めて指摘されることもあるだろう。そのような指摘を受けるのは、潜在的な問題点を指摘されている場合や相手が不安で心配している場合などがあるだろう。相手が状況を理解していない場合、あるいは、価値観や思考が全く異なる場合などもあるだろう。
ある特定のメリットに対する選択が、特定のリスク(デメリット)を負うこと以上に大切であり、企業の戦略や人生の計画など一連の価値体系の中で合理的で矛盾しないのであれば、迷うことはないだろう。
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