信頼する力

2008.07.02

仕事術

信頼する力

猪熊 篤史

知識や能力、経験、心構えなどに加えてビジネスの基盤となるものがある。それは、人を信頼する力である。

知識や能力との関わりにおいて「ものごとを批判的に考える力」が求められることも多い。ものごと、あるいは、人の言動をそのまま受け入れず、別の角度から分析出来る力もビジネスにおいて重要である。しかし、ビジネスを積み上げるため、あるいは、組織を運営するためには、人を信頼する力が必要である。

信頼関係なしにビジネスが実行され、良好な関係が持続することはない。相手に対する信頼がなければビジネスは成立しないし、個人が同じ目標や目的に向かって協力することはできない。

相手が裏切ると分かっていれば、裏切られる前にこちらが相手との関係を解除するか、最初から関係を持たないであろう。あるいは、裏切られても良いような浅薄な関係しか結べないだろう。

相手をどこまで信用できるかによって、組織行動の力強さや規模が決まる。

「良い人」という言葉を安易に使う人は、やはり良い人、純粋な人かも知れないが、ビジネスパートナーとしては信頼し難いかも知れない。「良い人」という言葉が、残念ながら文字通りの意味で使われることは少なく、むしろ「無害だが、無能な人」と同じ意味で使われることが多いからである。ビジネスにおいては、そんな傾向が強いようである。

人を信頼するということは、どういうことなのだろうか?

2つの側面があるだろう。1つは相手の言動によっておこるリスク、つまり、損害や失敗の可能性の一部または全部を引受けるということである。

もう一つの側面は、「共感」することである。相手の信念やビジョンに共感出来るかどうか、相手の価値観や考え方を素直に受け入れられるかどうか、それらを共有して心地良いかどうかが問われる。

共感するからこそ相手との関係において発生するリスクを引受けれることが出来るのである。

では、人はどのように他者に共感するのだろうか?

言葉、表情、しぐさ、態度などに対して共感することになるだろう。言葉使い、言葉の組合せ、言い回し、論理性に相手を判断する手がかりを見出すことが出来る。論理的な矛盾が多い人は、真剣勝負におけるパートナーとして信頼することは困難だろう。雄弁でなくても、明確でシンプルな考え方のできる人の方がはるかに信頼しやすい。

コミュニケーションの大半は言語以外の要素によって行われる。表情やしぐさ、あるいは、相手の態度によって相手が信頼できるかどうかを我々は感じとっている。温度、響き、香り、電磁波のような微妙な「信号」の変化を我々はコミュニケーションの中から無意識のうちに感じ取っているかも知れない。

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