サービスサイエンティストとして、サービスの本質的な理論を提唱し続ける松井さんとパナソニックで実際にCX・CSに向き合い、お客様へのサービスを提供されている今村さんをお迎えしてお話を伺っていきたいと思います。 (聞き手:猪口真)
第2回 技術の面白さと人の行動変容がマッチングしたとき、次の価値が生まれてくる
今村 佳世様(パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社 常務 CX担当、CS担当)
松井 拓己様(サービスサイエンティスト・松井サービスコンサルティング 代表)
猪口 サービスサイエンティストとして、サービスの本質的な理論を提唱し続ける松井さんとパナソニックで実際にCSに向き合い、お客様へのサービスを提供されている今村さんにお話しをうかがっていますが、前回は、「カジ育」が生まれた背景をご紹介いただきました。
家族の関係性を育むという「カジ育」のコンセプトにはどのようなプロセスで到達されたのでしょうか。
今村 家族には血縁の家族もあれば、広義では仲間の関係も含まれます。ただ、そもそも家事は家の中の話です。共働きが増えても主婦だけが一人で頑張っている状況は、元々社会課題でもあり、助け合いは永遠の課題です。例えば子育の視点で考えたら、家事は「くらす力」を育てることでもあります。家事を外して楽しみだけという生活はありません。家事はくらしそのものであって、その中にこそ楽しみや人生の醍醐味があるのではないでしょうか。これまでは「家事は機械に任せて、遊園地へ行きましょう」という時代でした。でもそうではなく、デイリーの中にこそ本当のくらしがあると思うのです。
猪口 大変だから端に置くのではなく、家事を含めたものが人生であり、生きているということだと。そういう意味では、江戸時代には家事を通じて人生教育していたわけですよね。
松井 僕は岐阜の田舎の出身で、野山を駆け回って育ちました。その経験が自分にとって良かったと思っています。今は東京で子育てをしていますが、子どもたちを野山で自由に遊ばせてあげたい、たとえ少しケガをしても、そこからいろいろなことを学んでほしいと思って、休日はできるだけ家族でキャンプに出かけたり、田植え体験をしに行ったりしています。ただしそれは、今村さんがおっしゃったように、「家事は横に置いて旅行に行こう」という発想です。
子どもに経験から学ばせたい、子どもの生きる力を育てたいと思ったら、毎日の家事こそが絶好の学びになるのではないかと思いました。親だけが家事をして、なるべく短縮をして時間をつくり、キャンプや田植えに行くのももちろんいい。だけど、目の前にある家事をもう少し子どもの成長機会にできたら面白いのではないか。そんな話も議論の中から出てきました。
インサイトナウ編集長対談
2024.06.03