ミドルネームという解決策がある

2025.07.24

経営・マネジメント

ミドルネームという解決策がある

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

随分と長い間、「旧姓使用」問題に関する論争が決着していない。しかし法律改正と全国官民のDBシステムの改修さえ決断すれば、この問題を解決できる選択肢がある。

この新制度導入には、現状の「旧姓の通称使用」や1で挙げたその法制化案では補えない、結婚による不利益の解消などといったメリットがあることは間違いない。

しかし社会的リスクも伴うため(図表1参照)、保守層を中心に強硬な反対論が根強い。具体的には次の通り。

1)子どもの姓の選択の問題

  • 生まれてくる子どもにどちらの姓を名乗らせるかの選択が問題となり、その度に夫婦間で意見が対立する恐れがある(それが故に離婚に発展しないかと懸念する声さえある)。
  • 子どもが成長してから姓を変えたい場合、家庭裁判所の許可が必要になるなど、手続きが煩雑になる可能性がある。

2)家族の一体感の喪失

  • 夫婦別姓の場合、家族であることを証明することが難しくなるのではないか。
  • 夫婦間、親子間、兄弟姉妹間で姓が異なる場合、家族の一体感が損なわれるのではないか。
  • 日本社会における伝統的な家族観や価値観とのずれが生じる。

3)相続や税制上の問題

  • 夫婦別姓を選択した場合、事実婚と同様に、相続や税制上の優遇措置が受けられない可能性がある(これは制度設計上の問題)。
  • 配偶者控除や配偶者特別控除、相続税や贈与税の特例などが受けられない可能性がある(これも同様)。
  • 戸籍管理や行政手続きが複雑化する可能性がある。

推進派(リベラル層)からすれば「『夫婦同姓がいい』という人たちはそのままでいいのだから、『夫婦別姓にしたい』という人たちにはその自由を与えてしかるべき」という意見だし、反対派(保守層)からすると「日本の社会を壊してしまいかねない」*という領域の話で、価値観がぶつかり合う事態だ。

*とはいえ、日本で夫婦同姓が一般的になったのは明治31年に施行された明治民法からだ。

要は、どちらの案も互いに一長一短あり、反対派を納得させ得るだけの説得力を持っていないのが現実だ(この2つは必ずしも二律背反でなく両方同時施行も可能なのだが、互いに聞く耳を持たないのが実情だ)。


3.ミドルネームの導入

そこで私案として提示したいのがミドルネーム導入という第3の選択肢であり、これなら両派とも納得できるのではと思えるものだ。

ミドルネームとは英語圏でよく見かけるものだが、例えばトランプ米大統領の場合、正式名はDonald John Trumpであり、このJohnがミドルネームだ。Donald J. Trumpと表記されることも、ミドルネームを略されることも多い。

このミドルネームは、先祖の名前、母方の姓、尊敬する人物の名前、洗礼名など、国や文化によって様々だ。日本では従来あまり馴染みがなかったが、日本で暮らす外国人の中にはミドルネームを持つ人もおり、外国人と結婚したことでミドルネームを持つことになった日本人を友人に持つ人も増えており、そんなに違和感を持つ存在ではなかろう。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。                     ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/                 ✅第二創業期の中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』を主宰。https://www.facebook.com/rashimbanclub/

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