今は焦って住宅を買うタイミングではない

2024.03.27

経営・マネジメント

今は焦って住宅を買うタイミングではない

日沖 博道
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

都市部の住宅価格は買う人の年収から逆算して妥当とされるレベルをとっくに超えており、持続可能な価格レベルではない。「高値掴み」の悲劇を味わいたくなければ、冷静になって見送るのが賢明だろう。

日銀がマイナス金利政策を転換したことで住宅ローンの金利も上がろうとしている。この動きの中で、「この先もっと住宅ローン金利が上がる前に、おうちを買うなら今ですよ」などと、住宅会社や不動産屋に強く薦められている人たちも少なくないだろう。

しかし冷静になって考えたほうがいい。都心ど真ん中の物件は希少価値があるので別格として、住宅価格は今がピークである蓋然性は高い。今慌てて買うと、10年先から振り返ると「高値掴み」になる可能性はかなり高い。金利だけで判断するのは早計だ。

まず統計的もしくは経験則的観点から見てみよう。物件価格が購入者の年収の何倍かを示す数値のことを「年収倍率」と呼び、「住宅の購入価格÷年収」で求めることができる。

この「年収倍率」はずっと全国平均で5~6倍程度と言われ続けていた。土地価格の高い東京圏でみても7~9倍が概ね平均だ。しかしバブル絶頂期である1989年には東京の新築マンションの年収倍率はピークの14.1倍をつけている(不動産調査会社・東京カンテイ調べ。以降同じ。なお1990年には瞬間風速的に18.12倍という数値も記録に残っているようだ)。

その後徐々に同倍率は低下し、2000年に7.13倍というボトムを記録。その後反転した東京の同倍率はじわじわと上昇した後、近年になって急速に上げ足を速め、今や約15倍になっている。築10年ほどの中古マンションでさえ14倍を超えるという(平均的には新築より広めなので不思議ではない)。

つまり住宅価格の年収倍率は既にバブル期とほぼ同じ、またはそれ以上の「割高」ということだ。この傾向は東京だけでなく他の大都市圏でも同様だ。一体どうやってこんな無理を続けられてきたのか。

よく指摘されていることだが、バブル期にはまだ少なかった「パワーカップル」という、共に稼ぎの多い夫婦が増えてきたことが背景にあるだろう(当時は「ダブルインカム」という呼び名はあったが、必ずしも両方が高収入というニュアンスではなかった)。それだけ経済的自立の条件を満たせる女性が増えたことは実に喜ばしいことだ。

しかし「パワーカップル」状態がずっと続く前提で、目の球が飛び出るような高額な住宅ローンを多少無理してでも組む、というのはかなりリスキーな賭けだ。

子どもが生まれてくれば、少なくとも両方がフルタイムで稼ぎまくるのは難しかろう。子育てピーク後に休職から復帰しても、必ずしも元の職場で同じ職種で、フルタイムでバリバリ働けるとも限らない(約束してくれた上司がずっといるとは限らない)のが現実だ。

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日沖 博道

パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長

「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。                     ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/                 ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/     

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