/どんな事業にも寿命がある。ただ、それは人間の働き盛りより、わずかに長い。一般に35年と言われている。だから、40才で会社を立ち上げ、いま70才で、後継者に事業承継するとしても、その会社の寿命は残りたった5年だ。/
ゼロから始めて、きれいにたたむところまでが、経営者の責任だ。内部留保も、従業員や取引先に迷惑をかけずに終わらせる、始末に備えた資金にすぎない。ところが、団塊世代は、ゴーイングコンサーンなどと言って、このことがわかっていないし、わかろうともせず、自分だけ途中で莫大な慰労金をがめて、やりっぱなしで放り出す。自分が成功させた事業は、いまも繁盛しているし、今後も永遠にますます右肩上がりで伸び続けるはずだ、と盲信している。おまけに、近年の若いIT企業を売却した億万長者あたりの話を聞きかじり、自分も事業を売って、豊かな老後資金にしよう、なんて、ふざけたムシのいい妄想だけ膨らませている。こんな連中と、事業売買価格が折り合うわけがない。
いや、価格以前に、まだ40代の働き盛りが、人のやり散らかした死にゆく事業の後始末で奔走するなんて、社会的にも損失でしかない。もはや時代が求めていない以上、ピークを過ぎた事業は、どうやってももう生き返らない。会社と自分の経歴を歴史と伝統があるかのごとく詐称ロンダリングするインチキ野郎でもないかぎり、同じ労力を注ぐなら、死にゆく事業を承継するより、これからの時代の新事業を更地に立ち上げた方が、はるかに有意義だ。
純丘曜彰(すみおかてるあき)大阪芸術大学教授(哲学)/美術博士(東京藝術大学)、東京大学卒(インター&文学部哲学科)、元ドイツマインツ大学客員教授(メディア学)、元東海大学総合経営学部准教授、元テレビ朝日報道局ブレーン
経営
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2025.02.07
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。
