/30年前の、あの大虐殺の経験者は多く、加害側、被害側とも、いまでも思うところはあるだろう。だが、だれが仕組んだのかさえわからない、あんな安っぽい陰謀扇動に二度と騙されないために、教育と知性が必要であることは、だれもが自覚している。/
世界が放置し、国連も手を出せないような混乱の中、周辺国トゥツィのルワンダ愛国戦線武装部隊がルワンダに侵攻。7月、ようやく軍事的にルワンダを制圧。とりあえず狂乱の虐殺は止まったものの、この殺戮に加わったルワンダの一般フトゥたちの人数はあまりに多く、その処分も紛糾。経営能力のあるトゥツィはもちろん、まっとうな宥和派フトゥも殺され、逃げ出し、人口半減、社会混乱で、国家再建できる人材も無く、まともな軌道に戻るまで30年を要した。
今日、ルワンダは、驚くような回復を遂げつつある。あまりに多かった大虐殺関与者の処分に関して村の合議裁判制を採ったことで、むしろいかさまの「民族」で分断されていた共同体意識が再生し、中央政府に頼らない村落の自治と開発が徹底した。また、都市部においても、30年を経て、国外に亡命していた人々がしだいに帰国し、寛容で先進的な多国籍文化を醸成しつつある。なにしろ、村にも、街にも、ゴミ一つおちていないのだ。それは、自分たちの国、という倫理と自負の表れ。もちろん、あの大虐殺の経験者は多く、加害側、被害側とも、いまでも思うところはあるだろう。だが、だれが仕組んだのかさえわからない、あんな安っぽい陰謀扇動に二度と騙されないために、教育と知性が必要であることは、だれもが自覚している。
※ 最近、この国も変な人が多いので、あえてわからないように書いている。が、何の話か、わかる人にわかれば幸いだ。
純丘曜彰(すみおかてるあき)大阪芸術大学教授(哲学)/美術博士(東京藝術大学)、東京大学卒、元ドイツマインツ大学客員教授(メディア学)、元東海大学総合経営学部准教授、元テレビ朝日報道局ブレーン
歴史
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2024.11.19
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。