日本企業は長年の間賃上げに消極的であり続けたが、物価高が進む中、世界の動向には大きく遅ればせながらも、大企業には賃上げの波が起こりつつある。問題は日本経済における雇用の大多数を占める中小企業である。その中小企業が賃上げを実施できるための条件は何かを探ってみよう。
多くの中小企業の業務で最も手間が掛かる部分は受発注および請求処理だ。その部分をDX化して効果を上げるためには、自社単独でIT化・ソフトサービス導入を実施するだけでは完結しない。むしろ中途半端に着手しても、一部はオンライン(しかも取引先に合わせて多数のシステムを導入しなくてはいけないことも少なくない)、一部はファクス、一部は電話での受発注処理、と却って煩雑化してしまいかねない。
いまだにファクスが受発注端末である業界が少なくないのは、そうした事情があるからだ(ファクスは受発注業務に使うには非効率的だが最も汎用的な手段だ)。小生は過去に複数の業界でこの問題に取り組んだ経験があるが、一つ片づけるだけでもとんでもない労力が掛かる話なのだ。
本当に受発注業務を効率化するためには川上と川下の業界が共通オンライン化しないといけない。そうなるとバリューチェーン上の業界全体でまとまることが必要になってくる。これに取り組むためには、地域経済を面倒みている地域金融機関が腹を据えて協力してくれるという条件が満たされないと、目途が立たないことがむしろ普通なのだ。
もしそういった条件が満たされるなら、中小企業庁や自治体の支援制度などもうまく活用して現実的なDX化を着実に進めることだ。ただしベンダーに勧められたからと安易に飛びつくと、使えないツールばかり抱えることになりかねない。よく調べて比較して、自分たちでよく考えることが不可欠だ。
こうした3つの方策のいずれかに挑戦すらできない情けない中小企業は、物価高で原材料費が上がる中で付加価値を確保できず、賃上げもできず、新しい働き手を確保できず、転職に自信がない能力的に劣る人材か高齢者しか残らなくなってしまう。
今は日本経済にとっても、そして中小企業にとっても正念場なのだ。社会インフラ・制度
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/