「理系」と呼ばれる分野の取材と執筆を得意ジャンルとするライター集団「パスカル」を率いる、インタビューのプロフェッショナル、竹林篤実さん。哲学科の出身ながら、文系・理系の枠を超えてライターとして幅広く活躍される竹林さんにお話しを伺いました。(聞き手:猪口真)
「STP」を明確にし、顧客との信頼関係を築く
猪口 竹林さんお一人で大学案内を作成したとお聞きしました。
竹林 ある大学に取材で行ったのをきっかけに、最初は学科紹介のパンフレット作りに声を掛けていただきました。編集は東京の編集プロダクションが担当し、その下にライターで入るかたちで参加しました。翌年には、元請けでパンフレットをまるまる一冊やりませんかというお話をいただきました。私は個人ライターですから、作業量を考えて返事に詰まっていると、「うちの大学について、一番よくわかってくれているのは竹林さんですから」と言っていただき、ありがたく引き受けることになりました。
すると、来年は大学案内本体をやりませんかという話が来たのです。さすがに一人では無理だと思って断ったものの、2年後にまた電話がかかってきて、コンペだけでもぜひ参加してほしいと依頼されて、参加しようと決心しました。そのコンペで一番効いたのがおそらく、インサイトナウのビジョナリーでもある金森さんが紹介する「STP」です。大学のポジショニング、学生はどのような学生なのか、その学生に何をしてあげるのかを示しました。今まで作っていなかったツールをさらに2種類提案して、これで仮に受験者が1000人増えたら1千万円入るのでペイするとプレゼンし、受注しました。
猪口 「うちの大学のことを一番知っているのは竹林さんだから」という信頼の大前提が何よりも、竹林さんの仕事っぷりを表しているようです。「今日は思わぬことを話してしまいました」という話もありましたが、どうしたらコミュニケーションの中で信頼関係を築けるでしょうか。
竹林 取材を受けてくれた時点で、相手はフラットというよりなんとなく好意を持ってくれているわけです。「話しましょう」という気持ちになってくれているので、その「話しましょう」をいかに誠実に聞くか。「今日は思わぬ内容まで話してしまいました」というのは、話しを聞いている端々で「それってこういう意味ですか」というツッコミを自分なりにできるかどうかがポイントなのかもしれません。
相手のバックグラウンドに関する知識については、下調べだけでなく、経験も当然あると思います。長い間やっていると、いろいろな人のいろいろな話を聞きます。忘れていることのほうが多いのですが、たまに、「ああ、誰かそんな話をしていたな。今聞いた内容と合うな」というようなケースがある。これは、特に研究者の取材にはとても役立ちます。
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インサイトナウ編集長対談
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