「家電ライフスタイルプロデューサー」として、縦横無尽に活躍される神原サリーさん。本質的な「顧客視点マーケティング」を企業に届けるために、独自の発信スタイルを貫いてこられました。会社勤めからフリーを経て、会社を立ち上げ、消費者には「楽しさ」を、企業には「顧客視点」を発信し続けるサリーさんにお話しを伺いました。 (聞き手:猪口真)
お相手:神原サリー様
家電ライフスタイルプロデューサー
商品は誰のため?
猪口神原サリーさんは、家電製品の専門家として有名になられていますが、本来は、企業や店舗に対して商品開発やマーケティングのアドバイスをされていますね。
神原 ほとんどの人が、私のことを家電の専門家だと思われているかもしれませんね。実は、企業の商品開発やマーケティングのお手伝いが本業なのです。
例えば、ユーザー向けの発表会を行わず、プレスリリースも出さずに、常に商談会ベースでものを売る会社の場合、いつも「BtoB」の観点から見ているということになります。商品を作るときにはお客様目線だと思っていたはずなのに、結局はバイヤーが売りやすいものを作ることになってしまいます。バイヤーから「それでは売りにくい」と言われると、作りたかったものが作れなくなるという話も聞きます。それはもったいないですよね。
それなら、広告費を使わずに、記者などにきちんと伝えて記事にしてもらったほうがいいわけです。本当のファンを増やすために、「最初は小規模でもいいから発表会をした方がいいですよ」とアドバイスしたり、私がプレスリリースを書くこともあります。バイヤーに伝えるための視点でプレスリリースを作ると、少しずれてしまうことがあるからです。
バイヤーの一番近くにいる営業が会社で強いのは仕方ないことです。だけど、その前には商品企画や開発の人たちが一生懸命頑張って作っています。本当のユーザーを向いて、「お客様はこんなものが欲しいだろうな」「こういうものがあったら暮らしが変わるだろうな」と思って作ったものが、ねじ曲げられて伝わり、「なんだ、売れないじゃないか」と言われてしまう。このねじれを避けたいのです。だから私はその間に立って、伝えるお手伝いをしています。社内で営業に対して「なんとかお願いします」ではなく、もっと自信を持って「この商品はこんなに良い」ということを言い切れるようにならないといけません。20人規模の会社から100人規模の会社、もっと大手であっても、この構造はどこも一緒です。
猪口「顧客視点」とは、どの企業も言う言葉ですが、本当の顧客に向けたメッセージ、プレゼンテーションになっていないということですね。どのような経緯で家電のお仕事をするようになったのですか。
神原 40歳のときに新聞社を辞めてフリーランスになりました。今の40歳は若いと思いますが、当時は、「40歳にもなって一女性が」とか、「主婦が」とか、「フリーだなんて何の仕事をするの?」などと言われてしまうような時代でした。でも、根拠のない自信があって、きっと大丈夫という気持ちでやってきて、5〜6年目ぐらいに法人にしました。新聞社時代から、家電業界に興味があり、何かお手伝いをしたいと思っていました。それが「顧客視点マーケティング」だったのです。顧客視点マーケティングを仕事としてやっていこうと模索している中で、何かに導かれるようにして家電にたどり着きました。おそらくその視点が一番足りなかったのが家電業界だったからだと思います。
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