NPO法人「老いの工学研究所」で高齢社会に関する研究活動を続けながら、企業にシニアマーケットに関するコンサルティング、研修・セミナーなどを提供されている川口さん。これから超高齢化社会を迎える日本にとって、必要な視点についてお話をうかがいました。(聞き手:猪口真)
川口 そうです。おそらく本業にも良い影響を与えると思います。ただし、課題もあります。
最近、高齢者を見ていても、会社を見ていても思うことがあります。「会社人間をやめて、自立して生きよう」という論調がありますが、僕は単純すぎると思っています。日本人にそんなことができるのか疑問です。群がって、空気を読みながら、身内の論理で生きてきた民族が、急に自立したことをしてやっていかないといけない。そんなことをしたことがないのに無理ですよね。日本人はどこかで群れるというか、群れなくても、自分の属している共同体がいくつかないとアカンということを直視しないと、地に足の着いた働き方、生き方論にはならないと思います。欧米人のように、会社とフェアな関係で、自分の生き方の中で仕事を位置づけるのは、日本人には無理です。そういう中で、サードプレイスのようなところ、地域に上手に馴染んでいくのは、日本の難しいところなのかもしれません。
自分の強みは何か
川口 日本では、副業を認めない会社も多いですが、そのような会社に対して、僕は、「強みは何ですか」ということを皆さんに問いましょうと言っています。強みがあれば生きていけるし、強みがあれば会社も期待できます。ただ、個人に「強みは何か」と問い続けて強みができるのであれば苦労はしません。会社も、社員の強みづくり、強みの発見を促すべきです。強みがあるのに自覚していない人もけっこういます。会社も、社員が若いうちから、20代では酷だと思うので、30代、40代ぐらいから強みづくりというものをする。社員と会社で協同してやっていけば、定年間際の社員の処遇に困ることも減るだろうし、個人としても定年した後に生きやすくなるのではないかと思います。
猪口 組織にとっても、個人の強みがはっきりしてくると、それが組織の強みにつながるし、仕事でも成果が出やすいですよね。
川口 キャリアデザインという実現しないようなことを求めるより、「強みは何?」と言ったほうがシンプルだし、取り組みやすいと思いますね。上司や人事部は、「3年後、5年後、どうなりたいですか?」と聞きますが、「先に言ってもらえますか」と言いたくなりますね(笑) むしろ、「強みは何?」ということをずっと問い続ける。べつにすぐにできなくてもいいと思うんです。
猪口 あえて3年後、5年後と言うならば、「3年後、5年後にどんな強みを持っていたいか」ということですね。
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