「家電ライフスタイルプロデューサー」として、縦横無尽に活躍される神原サリーさん。本質的な「顧客視点マーケティング」を企業に届けるために、独自の発信スタイルを貫いてこられました。会社勤めからフリーを経て、会社を立ち上げ、消費者には「楽しさ」を、企業には「顧客視点」を発信し続けるサリーさんにお話しを伺いました。 (聞き手:猪口真)
組織では、同じフルタイムでも契約社員と正社員の待遇は違いました。40歳になろうというとき、当時の編集長に「次の異動があったら、神ちゃん編集長をやって」と言われたのです。責任ばかりが増えてしまいますし、それに、いわゆる管理職よりも私は現場が好きです。誰かに会って、取材をして、いろいろな話を聞いて、いろいろなことを得たり、取材中に思うことがあれば「こっちをもっと訴えたほうがいい」と言う。私は昔からお節介なので、ピンと来たらそれを黙っていられません。言った後で「あれよかったです」と言ってもらったり、そういったちょっとしたことが楽しかった。もしかしたら、編集長になれば、立場は変わらず契約社員のままでも待遇は少し良くなったかもしれません。でも、ずっと引きこもって何かをするのは全然面白いことじゃなかった。だったら自分でやろうと思いました。
猪口 契約社員でそのような働き方をされている女性もたくさんいらっしゃいます。辞めても自分でやろうというサリーさんの今のお話は、共感される方も多いと思います。
神原 独立して最初のころは、前と同じようには稼げませんでした。でも、何かひとつやると、そこで何かしらの新しい出会いが生まれます。例えば、制作会社や代理店の人と会うと、その人たちからの紹介でまた新しい出会いが生まれます。そこで頑張ってワクワクしながら楽しくやっていると、不思議と「じゃあこれもやってもらえないかな」と繋がっていったのです。何か仕事があったらくださいと頼んだことは全然ないのですが、次々と仕事がくるのが楽しかったです。
猪口 フリーライターとして独立をされたわけですが、その後、株式会社を設立されました。やはりフリーという立場では、やりづらいこともあったのでしょうか。
神原 フリーライターとして毎日ハッピーに仕事をしていたとはいえ、今後の人生、やりがいやさらにその上を考えると、企業の中に入ってお手伝いをするような人になりたいと思いました。「ご意見ありがとうございました」と感謝はされるけど、仕事にならないことが多かったのです。これをビジネスとして成り立たせるにはどうしたらいいのだろうかと、楽しいけれどももがきました。その一段目が会社組織の立ち上げです。たった一人でも株式会社神原サリー事務所というかたちで自分の事務所にしたことで、まずは決意表明をしました。
猪口 その決意がターニングポイントだったのですね。スキルや能力も必要ですが、そうした決意と行動は欠かせません。しかしそれは、会社にいる頃とはまったく違う楽しさを得ることになりますよね。
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インサイトナウ編集長対談
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