「家電ライフスタイルプロデューサー」として、縦横無尽に活躍される神原サリーさん。本質的な「顧客視点マーケティング」を企業に届けるために、独自の発信スタイルを貫いてこられました。会社勤めからフリーを経て、会社を立ち上げ、消費者には「楽しさ」を、企業には「顧客視点」を発信し続けるサリーさんにお話しを伺いました。 (聞き手:猪口真)
私が家電にどんどん引き寄せられるようになった当時、家電量販店はまだ倉庫のようでした。今は女性もお年寄りも行きやすく、ショールーミングという言葉があるぐらい、ちょっと見てみたくなるような良いお店がたくさんあります。
それで、家電量販店に女性やお年寄りが少しでも来てもらうためにはどうしたらいいかと考えるようになり、家電製品の商品開発、マーケティングについてじっくり研究していくと、「家で料理をしない人が何で電子レンジを作るの?」「商品開発の人は本当に家で掃除をしているの?」という疑問がわいてきました。さらに、商品の本当に良いところを伝えられていませんでした。それで、当時始まった日経トレンディネットで、家電分野で署名記事を書き始めました。
猪口 今でこそ「エクスペリエンス」を提供する、ものではなく「こと」と言われたりしますが、まさにその先鞭をつけられましたね。
神原 家電業界には、黒物と言われるAV機器、テレビやオーディオ機器には専門のジャーナリストがいて、企業の商品開発のお手伝いをしている人も多いのですが、白物は生活の道具ということなのか、あえてお金を払って意見がほしいという風土がありませんでした。私が白物系のライターとしては珍しいタイプだと思われていたのは、白物は毎日使うものなのに感性ベースで見ていたからかもしれません。例えば、あまり好きではない掃除も、この掃除機を使えば楽しくなれる。当時そういう感覚はあまりありませんでした。どれだけゴミを吸うかとか、短時間でどうとかではなく、さわり心地だったり、ワクワクの要素に目を向けてみたのです。特に日本のメーカーは、とにかく他社に負けないようにしたいという思いがあって、横しか見ないようなところがあります。他社に負けないものを作るのではなく、私たちが使うときに、楽しさや「こうだったらいいのにな」を解決してくれることが大切なのではないかと、取材しながら思っていました。家電量販店の店頭でも、各社ごとに機能が○×で表示されていると、目くらましをされているような気がします。
決意表明として、会社を立ち上げる
猪口 サリーさんの現在のお姿を見て、女性としても、社会人としての働き方にしても、多くの方々のロールモデルとして存在されていると思います。独立して働くという選択をされたのは、どのような経緯だったのですか。
神原 私は、34歳のときに、週3回の時間給のアルバイトで新聞社に入りました。1年後には契約社員としてフルタイムで働くことになりました。
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