毎年、年末年始というと、「トレンド予測」がつきものだ。今年も例外ではないが、今ほど予測がつけがたい時代もない。コロナの終息も、経済の先行きも不明瞭な中で、確実にできることがひとつある。それは「企業文化の整備」だ。不況時には高い目的意識と結束が会社を救う。経営者/リーダーは、自らの会社が「何のために存在しているのか」「何を大切にしているのか」定義することを最優先課題とすべきだろう。
とくにアメリカでは、パンデミックの影響により、オフィス・ワーカーの多くが在宅勤務(リモート・ワーク)を強いられている。その中で、企業文化にあった人材を雇い、生産性を維持するのは極めて困難である。アメリカ随一の人事プロフェッショナル団体であるSHRMによれば、昨年、アメリカの就労人口の5人に1人が「粗悪な企業文化」を理由に離職したという。従業員の離職に伴い生じるコストはその年俸の150%相当にあたるといわれており、従業員の離職は生産性の損失を引き起こす。コロナ後の世界で繁栄を目指す企業は、従業員が会社において「重視されている/尊重されている」と感じ、会社の中でつながりを築き、お互いに助け合って、最大限の生産性を達成できるような環境を築くよう尽力する必要がある。
2021年に、企業の優先順位は「従業員の健全性」に置かれるべきだ。従業員を優先する職場は、生産性の高い職場である。福利厚生、職場の安全性、社内コミュニケーションなど・・・、従業員エクスペリエンスを形づくる諸々の要素が、従業員のニーズに見合うものかを今ひとつ精査すべきだ。そして、従業員への意識調査などをもとに、従業員の声を取り入れ、様々な改善を行っていくことが必要不可欠である。
パンデミックにより引き起こされた今日のような社会不安や経済不況といった危機的状況においては、企業文化が平時にもまして重要な競争優位要因となる。従業員レビュー・サイト、グラスドアによれば、アメリカの求職者の77%が、会社を選ぶうえで「企業文化」を最も重要な要素のひとつとして挙げている。また、半数以上が、「職場での満足度」に貢献する要素として、企業文化を給料よりも重要であると考えているということだ。
昨今においては、多様性(Diversity)、公平性(Equity)、インクルージョン(Inclusion)がアメリカの企業社会における標語のようになりつつある。企業リーダーは、自らこれらの促進に尽力することが求められている。アメリカの意識調査によれば、企業で働く従業員の10人中8人が、自社のリーダーが会社において、人種における平等を保証するための何らかの行動をとることを期待しているという。これらの視点がコア・パーパスやコア・バリューに反映されていることも必要だ。(日本においてはこれがジェンダーにおける平等などに置き換えられることは言うまでもない)それが、優秀な人材の確保につながるだけでなく、ブランド・ロイヤルティの強化にもつながる。
結論として、2021年に向けて企業が目指すべき方向性は、活力あふれる強靭な企業文化の育成である。それは、2021年を超え、長期的に企業の健全性や生産性を育むものになるはずだ。
企業文化
2020.12.24
2020.12.25
2020.12.29
2020.12.30
2020.12.31
2021.01.01
2021.01.03
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。