2020年11月27日に逝去した元ザッポス社CEOトニー・シェイの追悼ブログ。第六回目は、2011年11月にトニー・シェイを招いて行った東京、日本橋でのチャリティ講演の思い出です。収益金でスリランカの学校に校舎を寄贈することもでき、意義深いイベントになりました。
2011年11月21日(月)夕刻、私は日本橋三井ホールの舞台裏にいた。
ほぼ一年越しで企画してきた『ザッポス社CEOトニー・シェイ来日特別チャリティ講演』の幕が上がる直前だった。当初は4月の中旬に予定していたのが東日本大震災のために延期となったが、関係者の努力と日本のビジネス界の皆さんの温かい支援を受け、プロジェクトは実現した。
三時間で一万円はやや高い・・・と渋る声もちらほらあったが、日本全国から六百人近くが集まり、熱気あふれるイベントとなった。ルーム・トゥー・リード・ジャパンの協力を得ての完全チャリティ・イベント。収益金の全額が寄付され、内戦で甚大な被害を受けたスリランカ北部のマナー県の小中一貫教育学校に新校舎を建てることができた。
校舎に埋め込まれた寄贈記念プレートには次のように記されている(以下拙訳)。
『この校舎は地域コミュニティの人々、ルーム・トゥー・リード、石塚しのぶ、トニー・シェイと友人たちの協力により建てられました。学びの愛と力でもって、今後、世界に幸せを届けるであろうスリランカの子供たちに捧げます』
「ルーム・トゥー・リード」を選んだのには理由がある。イベントの企画を持ちかけた当初からトニーは講演料にはまったく関心がなく「チャリティにでも寄付して」ということだった。そんなトニーの心意気に賛同し、主催者である私たちも一切利益を追求しない完全チャリティ・イベントにしようと決意したが、チャリティなら何でもいいというわけではなく、できるだけトニーの人柄や関心にマッチしたものにしたかった。ザッポスといえば、ラスベガスにある小児がん病棟を社員が定期的に訪れて読み聞かせをしたり、ハロウィンなどのスペシャル・イベントをやったりとボランティア活動に力を入れていた。それに、トニー自身の「学び」への情熱を考慮し、「子供+学び」ということでルーム・トゥー・リードほど的確な協賛団体はないと判断したのだ。早速、サンフランシスコのダウンタウンにある米ルーム・トゥー・リードの本部を訪れて相談したら「ぜひ」と日本事務局を紹介され、話はトントン拍子に進んだ。
私が率いるダイナ・サーチという会社は社員十名程度の小さな会社であり、当時、もう既に「セレブリティCEO」のステータスに達していたトニー・シェイをアメリカから招き、五百人を超える規模のイベントを主催するのにはかなりの覚悟と信念とエネルギーを必要とした。私もスタッフも我ながらよくやったと思う。しかし、関係者から参加者まで、多くの人たちに与えたインパクトを思えば、あのイベントはやる価値が大いにあったと今でも信じている。トニー・シェイも、共演者でトニーの「第二の脳」として知られていたジェン・リムも私たちの期待を超え、覇気みなぎる素晴らしいプレゼンをしてくれた。
企業文化
2020.12.23
2020.12.24
2020.12.25
2020.12.29
2020.12.30
2020.12.31
2021.01.01
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。