先月、46歳の若さで亡くなった元ザッポス社CEOであり、革命的な経営者、トニー・シェイの追悼ブログ。12年にわたる交流を通して感じた彼の人となりや、忘れがたい逸話について綴っています。二回目は、ザッポス本社に初めて訪問した際の驚きと感動について。
しかし、その日、ザッポスを訪れて、はじめて、「働く人主体」の経営というものを目の当たりにしたのだ。老若男女、大学を卒業したてでコンタクトセンターで働き始めたようなオペレーターさんまでもが、一人残らず、自分の会社や仕事について「オーソリティ(権威)」をもって話していた。
そして、まるで示し合わせたかのように、どの人に話を聞いても、言葉の端々に必ず飛び出してくるのが「コア・バリュー」だった。「ザッポスの〇〇というコア・バリューに基づいて、私はこう考えた」「〇〇というコア・バリューがあるから、私はこうした」・・・半日話を聞いただけで、そういったコア・バリューがらみの逸話がノート一冊がいっぱいになるくらいに集まったのだ。
これらのインタビューは、「会社側が選んだ」人たちだけのものではなかった。普通の会社では、会議室に通されて、そこであらかじめセッティングされた人たちをインタビューしてそれで終わりだが、ザッポスでは私はいわゆる「オール・アクセス・パス」を与えられていた。つまり、「誰とでも自由に話をしてください」ということだ。これも驚きのポイントのひとつだった。
働く人にこれほどまでのパワーを与える「企業文化」とは?「コア・バリュー」とは?帰りの飛行機の中でノートを整理しながら、私の頭の中はショックと興奮で渦巻いていた。私はその時、未知の世界の入り口にいたのだ。そしてコンサルタントとして、研究者として、そこに身を投じない選択肢はなかった。
翌朝、私はトニーにお礼を兼ねてお願いのメールを書いた。ザッポスの企業文化について、コア・バリューについてもっと知りたいこと、できれば、ザッポスの社内に一週間滞在させてもらって、インタビューや観察を通して学びたいこと、そして、ひとつの可能性として、その研究成果を一冊の本にまとめたいことなど。
ダメもとと思って書いたメールだったが、返事はすぐに来た。それは「YES」というひとこと。その後、トニーが引き合わせてくれた「社内コンシェルジュ(当時は「CAN DO(キャン・ドゥ/なんでもござれ)」という部門名だった)」の人たちとやり取りをして、ザッポス滞在の予定を三カ月後の九月下旬に定めた。
企業文化
2020.06.10
2020.06.23
2020.08.20
2020.12.22
2020.12.23
2020.12.24
2020.12.25
2020.12.29
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。