コロナ禍で繰り返される「火事場泥棒」的な行為は反社会的で浅ましいものなのに、若い人たちがよく考えもせずに軽い気持ちで手を染める風潮こそが恐ろしい。そこには「おカネを稼ぐ」ことの意味合いを十分に理解できていない幼稚性が見える。
こういう「指南役」連中の一部は、制度の抜け穴を見つける悪知恵、思慮の足らない若者を実行犯にするやり方、そして自分たちには「足がつかない」やり方を熟知していることからして、特殊詐欺を裏で操っている組織的犯罪集団である可能性も高い。
この持続化給付金の不正受給は、既に世間の注目を浴びて「犯罪だ」ということが認知されてきた上に、調べられたらすぐに発覚すること、不正が発覚した場合には2割増の返還請求を受けることもやがて知られるだろうから、今後は件数もかなり減るだろう。
さて、もう一つのコロナ禍での「火事場泥棒」的な行為は、Go Toイートにおける「錬金術」だ。居酒屋チェーン「鳥貴族」で1品だけを注文し、1000円分のポイント付与で"儲け"を得る、いわゆる「トリキの錬金術」が最も有名だ。他の飲食チェーンでも同様の行為が発見されているし、Go Toイートのポイントを貰って次回またそのポイントで食事ができるという「無限ループ」もネット上で話題となっている。
発端は、Go Toイートキャンペーンの内容とポイント付与の仕組みをいち早く知った人間が「これって、注文代金と関係なしにポイントをもらえるなら、逆ザヤを狙えるな」と気づき、それをさも自慢げにSNSで拡散させたことに始まる。そのやり方を知って実際に飲食チェーンで試してみて、「本当にできる!」と報告する連中が続出して、さらに真似する奴らが増える、という事態になっているのだ。
お陰で、本来なら苦しんでいる飲食店を助けるための「呼び水」になるはずの税金が、さもしい連中の懐に流れ込んでしまい、キャンペーンの終了時期を少し早めてしまうことにもつながっている。
実際のところ、この「予約に伴いポイントが発生する」タイプのGo Toイートキャンペーンは(もともと問題含みだったが)間もなく終了するので、問題もまた終息しようが、別ネタで同様のことが繰り返される懸念は高いのではないか。
先の持続化給付金の不正受給と違って、初期の「錬金術」提唱者も、その尻馬に乗った連中も、これは犯罪ではないが、政策趣旨に大いに反し、飲食店にとっては迷惑な行為だということぐらいは自覚している(はずだ)。しかし「錬金術」などというネーミングから、むしろ自分たちは「頭がいい」と思い込んでいる可能性すらある。罪悪感はほとんどないため、SNSで「成果」を自慢する輩まで続出する始末だ。
いずれの行為も大学生など若い人が多いという(確かに、いい年してこんなことをやっているようでは間違いなく人生の敗残者だ)。彼らに欠けているのは、「おカネを稼ぐ」経済行為というのは誰かの役に立つことへの社会からの報酬であり、それが「自分が社会に受け入れられている」証の一つだから嬉しい、という明確な自覚と体感だ。
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/