コロナ感染拡大抑止のための「ロックダウン(外出禁止令)」が引き金となり、アメリカ中のオフィス・ワーカーが「在宅勤務」を強いられることとなった。先日、フェイスブックは今後、オフィスの「リモート化」を方針として進めていくことを発表し、2030年までに社員の半数が「リモート」の体制で働くことになると予測している。豪華なアメニティや見た目のカッコよさを売りに、社員が自慢できる「キャンパス」は長らく企業文化のシンボルとして、そして「セレンディピティ」とイノベーションを触発する場として、その会社で働く人の心をひとつにする役割を果たしてきた。テレワークの時代の「従業員エンゲージメント」は果たしてどこに行くのか?
従業員間の「つながり」を保つために、「バーチャル飲み会」「バーチャル・ヨガ・クラス」、そして、子供の面倒を見ながら在宅で働いている従業員のためには「バーチャル・ストーリータイム(絵本の読み聞かせ)」など、各社、様々な工夫を凝らしている。しかし、「バーチャル」で何かやればいいというものでもないだろう。「ズーム」みたいなプラットフォームがまだ物珍しいうちは面白みもあるが、いずれはマンネリ化して飽きがくる。バーチャルにつながってただ一緒にお酒を飲むだけではあまりにも脳がない。
今後、人が「会社」という場に集まらずに働くワークスタイルが定着すると、会社としての「目的意識」や「価値観」の共有がますます重要になってくる。そういった「鎹(かすがい)」がなくては、ただ一緒に作業をしている人の集まりになってしまう。個人が各自の能力を「切り売り」するという感覚では、「会社」という共同体としての力は生まれない。
複数の人が共通の目的意識や価値観のもとに結束し、力を合わせて何かを成し遂げる時、つながりが芽生え、一体感や仲間意識が生まれる。個々人の才能やスキルを寄せ集めてモノやサービスをアウトプットすることだけにフォーカスをおいた会社はあまりにも味気ない。共通の目的意識や価値観をもってつながり、人がお互いに共感・共鳴して働くからこそ未知数のイノベーションが生まれる。「リモート・ワーク」の時代だからこそ、会社の一貫性や個性に磨きをかける「企業文化」の重要性は薄まるどころか、今後いよいよ高まっていくはずだ。
過去10年以上にわたり、会社が価値観の共有を基盤として唯一無二の企業文化を築き上げ、企業力につなげる「コア・バリュー経営」のメソドロジーを広めることに注力してきた。人々が離れつつ、つながって働くことが要求される「リモート・ワーク」の時代に、戦略的、言い換えれば「独自性豊かな」企業文化を構築していくうえで最強の武器となる「コア・バリュー経営」も、いよいよ、力の発揮のし甲斐があるというものだ。
企業文化
2018.03.07
2020.02.07
2020.02.28
2020.03.17
2020.05.29
2020.06.10
2020.06.23
2020.08.20
2020.12.22
ダイナ・サーチ、インク 代表
ダイナ・サーチ、インク代表 https://www.dyna-search.com/jp/ 一般社団法人コア・バリュー経営協会理事 https://www.corevalue.or.jp/ 南カリフォルニア大学オペレーション・リサーチ学科修士課程修了。米国企業で経験を積んだのち、1982年に日米間のビジネス・コンサルティング会社、ダイナ・サーチ(Dyna-Search, Inc.)をカリフォルニア州ロサンゼルスに設立。米優良企業の研究を通し、日本企業の革新を支援してきた。アメリカのネット通販会社ザッポスや、規模ではなく偉大さを追求する中小企業群スモール・ジャイアンツなどの研究を踏まえ、生活者主体の時代に対応する経営革新手法として「コア・バリュー経営」を提唱。2009年以来、社員も顧客もハッピーで、生産性の高い会社を目指す志の高い経営者を対象に、コンサルティング・執筆・講演・リーダーシップ教育活動を精力的に行っている。主な著書に、『コア・バリュー・リーダーシップ』(PHPエディターズ・グループ)、『アメリカで「小さいのに偉大だ!」といわれる企業のシンプルで強い戦略』(PHP研究所)、『ザッポスの奇跡 改訂版 ~アマゾンが屈した史上最強の新経営戦略~』(廣済堂出版)、『未来企業は共に夢を見る ―コア・バリュー経営―』(東京図書出版)などがある。