「『9月入学』を目的化すべきでない」という論者もいる。しかし、日本の学生の海外留学と外国人留学生の受け入れをしやすくし、ひいては日本の若者と教育現場に多様性の価値観をもたらすという大義は正しく、それが大目的になると考えるので、小生は大賛成だ。問題はその方法論。ここに私案を提示したい。
4月入学制の生徒たちにとっての3月の年度終業式と4月の年度始業式は、9月入学制の生徒たちにとってもそれぞれ2学期の終業式と3学期の始業式となる。9月入学制の生徒たちにとっての7月の年度終業式と9月の年度始業式は、やはり4月入学制の生徒たちにとってもそれぞれ1学期の終業式と2学期の始業式となる。つまり一緒にできるのだ。
2.課題とその考察
ではこの「調整学年」による『9月入学制』の導入案には課題はないのか。残念ながらどんな変革案にも課題はついてくる。この案にも課題はある。文科省が提示している他の案より課題が小さいというだけだ。
まずとにかく調整期間が長くなる。「調整学年」が小学校に入学して大学を卒業するまで、つまりこの『9月入学制』が開始して完成するまで、16年掛かる。遠大な計画なのだ。
「それでは今年度の学習の遅れへの対策にはならない」「そんなに長くは待ってられない」という声が聞こえてきそうだが、そもそも『9月入学制』は教育制度の根幹の一つを変える長年のイシューであって、学習の遅れへの対策などという小手先の話ではない。それに他の方策では課題・難点が多過ぎて結局は実現までに至らないだろう。それよりは、時間を思い切り掛けることで長年の懸案がとにもかくにも解決するほうが望ましいだろう。それに社会にとっても9月入社などへの移行準備期間もたっぷりある。
次に当然だが、学校側は計画的な調整を行う必要がある。「調整学年」が入学した4月から7月の間は各学校全体の生徒数は若干(7ケ月分)減り、その5ケ月後の9月に新制度の新入生が入学してから翌年の3月に旧制度の学年の生徒が卒業するまでは逆に若干(5ケ月分)増える。このパターンを各学校は、「調整学年」が卒業するまで毎年繰り返すことになる。
その分、教師と教室などの体制に関して計画的な調整を行う必要がある。小学校はともかく、中学校と高校にはたっぷり準備期間はある。子供の数自体が年々減少しているため、大半の地域では教室の確保は工夫の余地はあるだろうが、教師の数は生徒が多い時期を基準に確保すべきであろう。
先に述べた通り、学校全体では生徒数は年間を通して増減するが、平均すれば従来通りなので、学校経営や部活動などが生徒数不足で不都合に陥る要因にはつながらないはずだ。私学では、「調整学年」が5/8サイズであることで彼らの入学時の歳入が減ることを心配するかも知れない。しかし5ケ月後には通常サイズの学年が入学してくるので問題はなかろう。とはいえ、「調整学年」の入学時とその5ケ月後の次学年入学時の年だけは、年2回の卒業と新入生歓迎活動が必要になるので、いずれの関係者も忙しくなるだろう。
社会インフラ・制度
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
