サービスを個人や現場任せにするのではなく、組織的に磨いていこうとする企業が増えています。サービスの組織力向上は、方向性や着眼点を意識して取り組むことが重要です。
前回の記事で、サービス向上の方向性を分解してみたところ、経営に貢献するような成果に繋げるためには、努力の方向を「得点型」に切り替える必要があると分かりました。
得点型の顧客満足度調査は、「平均値」を見ない
顧客満足度の目標値として、平均値や「やや満足」と「大満足」の合算値を据えていることが多いものです。平均値や合算値が上昇するということは、「不満が減る」という意味では良い目標だと言えるかもしれません。しかしこれは「失点」を減らしたにすぎず、「得点」が増えたとは言えません。顧客満足の平均値が上昇しても、「大満足」したお客様が増えていなければ意味がないのです。これに気付かずに、顧客満足度の平均値が少しずつ向上しているからと安心して活動を続けていても、なかなか成果は出てこないことでしょう。そして最終的には「CS活動を長年続けてみたものの、結局はコストがかかるだけで経営貢献に繋がる成果が出なかった」という不本意な結果になりかねません。
CS向上の目的をリピートオーダーの獲得とする場合には、顧客満足度の目標は平均値を高めることではなく、大満足のお客様を増やすことです。つまり、取り組みの目標を「CSの平均値をいかに高めるか」から、「やや満足のお客様にいかに大満足していただくか」に切り替えて組むことが極めて効果的です。しかも、「やや満足のお客様」は、個人名や会社名が分かっても、「どうしたら大満足していただけるか」は分かりません。それよりもむしろ、「どんな事前期待を持った方が、やや満足と答えたのか」を知る必要があるのです。
このように、得点型の顧客満足度調査を推進するためには、これまでの取り組み方を大きく変えなければならないと分かります。
得点型のサービス品質向上は、評価項目が違う
多くの企業で取り組まれているのがサービス品質向上の取り組みです。この取り組み方も、失点をなくすことに注力されていることが多いため、得点型に切り替えることで大きな成果に繋がることがよくあります。
例えばサービスの現場の品質を頻繁にチェックして、品質指標の推移をウォッチしている企業は多いと思います。あるいは、ミステリーショッパーやミステリーコールを活用して、サービス品質をスコア化して評価しているかもしれません。そのチェック項目を見返してみてください。
ミスはなかったか?お待たせしなかったか?無礼はなかったか?といった具合に、「失点していないかのチェック項目」がズラッと並んでいることに気付きます。一方、得点を評価する項目はと言えばごく一部。しかも、ホスピタリティを感じましたか?といった極めて曖昧な評価しかできていないことが多いようです。
service scientist's journal(サービスサイエンティストジャーナル)
2016.07.05
2016.07.12
2017.03.28
2017.04.04
2017.04.11
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2017.05.02
2017.05.09
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新