サービスを個人や現場任せにするのではなく、組織的に磨いていこうとする企業が増えています。サービスの組織力向上は、方向性や着眼点を意識して取り組むことが重要です。
「顧客満足が向上したのに売上やリピートが増えない」という壁にぶつかることは少なくありません。この壁にぶつかったサービスをひも解いてみると、努力の方向に課題があるケースがあります。本連載ではこれまで、目に見えないサービスや顧客満足を少しロジカルに捉えることで、成果を出すための努力のポイントや、取り組みの盲点を明らかにしてきました。今回はそれらを踏まえて、サービスの組織力を高めて事業成長の貢献に繋げるための3つの観点について、整理してみたいと思います。
サービス組織力向上の努力の方向
例えば、年に数回、顧客満足度調査を実施し、お客様から頂いた声をサービス改善に活用しています。また、現場の優秀事例を社内で共有したり、年に何度かのCS総会で表彰しています。一例を挙げると、「お客様からのクレーム数が劇的に減った」「サービス品質のバラつきがなくなった」「納期遵守率が大幅に改善された」「ミスが減った」など。その結果、お褒めの言葉をいただいたり、顧客満足度が向上した、という具合です。
また、日頃から現場のサービスレベルを評価したり、サービスの改善に取り組んでいる企業もあります。例えばミステリーショッパーやミステリーコールを活用して、現場のサービスの実体をスコア化して評価したり、小集団活動を通してサービスの改善提案を現場から募ったりと、日常的にサービスの改善を意識しています。
これらの取り組みで努力しているのは、まだまだ「失点をなくすための努力」が多いようです。少し思い返してみてください。例えば社内の優秀事例として評価されているもののほとんどが、失点をなくした事例ではないでしょうか?ミステリーショッパーなどで活用しているサービス現場のチェックリストのほとんどの項目が「失点していないことのチェック」になっていないでしょう?社内で活用しているマニュアルや、人材育成のための研修は、失点しないためのものばかりになっていないでしょうか?
もちろん、「失点をなくす」ための努力はとても大切です。クレームが頻発している状況では、失点をなくす努力なしにサービス事業の存続はないと言えます。ある意味で、サービス向上の第一歩は、失点をなくす努力から始まると言えます。
しかしお客様にしてみれば、いくら失点をなくす努力をしても、「そんなことは当たり前でしょ」と言いたくなってしまいます。今の時代、失点をなくす努力だけではお客様は喜んでくれないのです。このことから分かるように、失点をなくす努力ばかりに専念するのは得策ではないのです。つまり、失点をなくす努力だけでは、売上向上やリピートオーダー獲得などの事業成長に貢献するような成果を出すことは難しい時代になったのです。
service scientist's journal(サービスサイエンティストジャーナル)
2016.06.28
2016.07.05
2016.07.12
2017.03.28
2017.04.04
2017.04.11
2017.04.18
2017.04.25
2017.05.02
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新