/朱子学的リーダーは、オレの背中を見てついてこい、という模範提示型。陽明学的リーダーは、個々の部下たちの私利私欲を適材適所で活用する組織構築型。どちらが良い悪いではなく、部下を見極め、二つのタイプをうまく使い分けることが大切だ。/
朱子学/陽明学については、いろいろな本が出ている。が、まず一般の人には、読んでもわからないのではないか。だいいち、人名などからして漢字が読めまい。歴史もなにもふっとばしてかんたんに言うと、リーダーのあり方には朱子学型と陽明学型があって、どちらがいいか、数百年にわたって言い争っている。
朱子学的リーダーというのは、オレの背中を見てついてこい、というやつ。とにかくみずから率先して行動し、部下たちに模範を示す。でも、それだけ。それ以上のことはしない。ごちゃごちゃ、あれしろ、これしろ、など、部下たちに指示したり、命令したりしない。ある意味、部下たちを全面的に信頼している。とはいえ、またある意味では、自分と同じスタイルしか認めない。部下たち全員が、自分とまったく同じようになってくれることを期待している。
他方、陽明学的リーダーというのは、部下たちの私利私欲を容認してしまう。有象無象の連中ごときが自分と同じように組織のことを考えるようになるなど、けっして期待しない。そうではなく、連中のそれぞれがなにをどうしたがっているのかを細かく観察理解し、これらの私利私欲が全体として課題解決に向かうように、工夫してうまく組み上げてやる。だから、それぞれの部下が好き勝手にやっているだけにもかかわらず、適材適所の配置、臨機応変の指示で、気がつけばきちんと成果があがっている。
どちらが統率力があるか、魅力的か、など、なんとも言えない。朱子学的リーダーは、一見、とても冷たいように見える。しかし、内心は熱く、部下たちを全面的に信頼している。逆に、陽明学的リーダーは、見た目はとても温厚だ。しかし、その本心では私利私欲にはしゃぐだけの部下たちを心底から見下している。
しかし、この二つのリーダーシップのタイプは、組織の成長拡大において、大きな問題となる。というのも、朱子学的リーダーの下で自発的に育ってきた部下たちは、だれしもが均一にリーダーの気風を受け継いでおり、分社や継承がしやすい。ただし、そのリーダーの気風によっては、激しい内部対立を起こし、血で血を洗うような抗争になる。他方、陽明学的なリーダーの下でずっと守られてきた部下たちは、そのリーダー無しには生きていけない。全体をうまくまとめてきたリーダーが死んだら、組織全体が瓦解。それどころか、その瓦解した組織からこぼれ落ちても、連中は、もはや好き勝手なやり方に慣れきってしまっていて、どこに行っても、なにもできない。
経営
2017.10.13
2019.02.08
2020.03.05
2020.03.08
2020.03.17
2020.06.13
2020.07.09
2021.01.04
2021.02.03
大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。