/朱子学的リーダーは、オレの背中を見てついてこい、という模範提示型。陽明学的リーダーは、個々の部下たちの私利私欲を適材適所で活用する組織構築型。どちらが良い悪いではなく、部下を見極め、二つのタイプをうまく使い分けることが大切だ。/
したがって、現実問題としては、リーダーシップは朱子学型と陽明学型を二重化する必要がある。すなわち、幹部候補の経営陣に関しては、いつ自分になにかあっても組織が継承されるように、また、必要に応じていつ分社しても、そのそれぞれがきちんと独立して機能するように、朱子学的に育てていかなければならない。その一方、それ以下の被雇用者については、はなからできもしない人材育成でむだに手間をかけたりせず、いかに徹底的にその好き勝手な私利私欲を組織として活用するか、陽明学的な工夫をしないといけない。
会社に来ている連中みんなに、会社へ忠誠を尽させようなどとするな。カネ目当て、一時の腰掛け、肩書きほしさ、ただなんとなく来ているだけ、などなど。上はバリバリ働くのが当然だと自分は思っていても、下にはむしろそう思っていない連中の方が多い。だからといって、上としては、そんな下の連中を遊ばせておくわけにはいかない。それぞれの好き勝手な私利私欲を見極め、その私利私欲のゆえにみずからがんばるようなところでうまく活用する。その一方、いつでも自分の代わりになって、いざというときに信頼して仕事を任せられるような人材を早めに選び出し、自分の背中で引っ張って育てておかないといけない。
とはいえ、こんなことは、じつはどこの会社、どこの組織でも、ふつうにやっていることだろう。ただ、この二つのタイプのリーダーシップを、それぞれの部下ごとに自覚的に明確に使い分けることが大切だ。そうでないと、好き勝手な部下たちを前に自分一人がすべてを背負い込んで自滅してしまったり、逆に部下たちに期待しすぎても、過労だ、自殺だ、上司のせいだ、と逆恨みされたりする。
(by Univ.-Prof.Dr. Teruaki Georges Sumioka. 大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。近書に『アマテラスの黄金』などがある。)
経営
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大阪芸術大学 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。