グローバリズムの行く末:社会格差と疫病・犯罪

2019.02.08

ライフ・ソーシャル

グローバリズムの行く末:社会格差と疫病・犯罪

純丘曜彰 教授博士
大阪芸術大学 哲学教授

/ブロック経済は国際戦争を引き起こす、というのが、金満グローバリスト連中の決め言葉。しかし、それは、やつらのウソだ。むしろ、グローバリズムこそが国内破断を引き起こす、と言うべき。でかすぎるプリンは、自重で崩れるのだ。/

ブロック経済は国際戦争を引き起こす、というのが、金満グローバリスト連中の決め言葉。しかし、それは、やつらのウソだ。むしろ、グローバリズムこそが国内破断を引き起こす、と言うべき。

グローバリズムの根本原理は、比較優位、アダムスミスの『国富論』。ようするに、協力分業がパイそのものをでかくする、という話。簡単なモデルで考えてみよう。1人の成果が1だとする。ここで6人が協力分業して、それぞれ得意分野に集中すると、成果は1割増しの6.6になった。だから、協力分業した方がいい、というのが、やつらの言い分。

しかし、それは国富社富としての話。どこの国、どこの会社でも、この6.6を6人で等分したりしない。協力分業した方が得になる、と言って話をまとめたやつが1人、それを手伝ったのが2人、従っただけなのが3人だとすると、たとえば、下を基準として、中を1.1倍、上を中の1.1倍=下の1.21倍で分配。つまり、6.6を、1x3+1.1x2+1.21x1=6.4で割ることになる。すると、トップは1.25、中は1.13、下は1.03。つまり、下でも3%のプラスになる。それなら、みんな納得。

ところが、これが発展して、もっと大きな協力分業、5階層15人になったとする。バイトx5人を基準として、ヒラx4人がその1.1倍、管理職x3人が1.21倍、取締役x2人が1.33倍、トップが1.46倍の分配(それぞれ直下層の1.1倍)とすると、成果全体を17.15で割ることになる。だから、協力分業の結果が17.15/15=1.14、つまり、14%増し以上になれば、最下層のバイトも協力分業した方がプラスになる。しかし、これを割り込むと、最下層のバイトは協力分業した方が、むしろマイナスになってしまう。いわゆる「ワーキング・プア」。それも、上半分は組織をまとめておくために新たに追加で出来てしまった仕事で、実際に協力分業しているのは、最下層の現場のバイト5人と事務のヒラ4人だけなのだから、この半数ばかりの「協力分業」くらいで14%もの生産性向上がもたらされるわけがない。

チンケな経済モデルだが、現代社会は、ほぼこれと同じ構造になっている。最下層のバイトは、協力分業する方が、配分が少ない。かといって、独立自営しても、組織にはかなわない。だいいち、不満連中は、15人のうちの5人。多数決の「民主主義」では、かれらの声は圧殺できる。とはいえ、これが、ヒラまで、もう一階層上がってきたら、15人中の9人になって、ひっくり返ってしまう。逆に言うと、このギリギリのところ、ヒラ4人の半分、2人を「将来性」とかなんとか、絵に描いた餅の理屈で言いくるめておけば、不満は7人で半数未満だから大丈夫、というのが、国民経済学というもの。

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純丘曜彰 教授博士

大阪芸術大学 哲学教授

美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。東大卒。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、東海大学総合経営学部准教授、グーテンベルク大学メディア学部客員教授などを経て現職。

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