14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第2章|成長〉第6話
人生は長い期間の勝負です。相撲は一日一番勝負ですが、トータルでは十五番の勝負です。もっと言えば、一年六場所でほんとうの実力が決まります。短期でみれば、努力もせずにたまたま一番勝てることがあるかもしれません。でも、それはほんとうの自分の力を反映しないウソの結果です。中期・長期で勝ち越すことは難しいでしょう。しかし、きちんと努力を積んだ過程というものは、短期で一番か二番負けることはあっても、最終的には勝ち越しにつながっていく。その意味で、努力にウソはありません。
ですから浩之は、今回の受験で結果が出なかったからといって、自分がやってきた過程をすべて否定することはありません。ましてや、この先の人生に絶望する必要もありません。たしかにどの学校に入学するかは人生の大きな出来事です。しかし、それよりも大きな出来事に浩之は今後いくつも遭遇(そうぐう)するでしょう。そのときにこそよい結果を出せるよう、今回の不合格から立ちなおり強い自分になっておくことが、当面の大事な作業といえます。
悩み、迷い、マイナスからプラスへ自分を引き上げる努力過程は、必ず未来の浩之をよりよい方向へ導いてくれるにちがいありません。それこそ「過程はウソをつかない」ことを自分自身で証明する絶好の機会になります。
また、失敗や挫折の状態にあるときほど、文学などの芸術を深く味わうことができ、人間や社会を深く見つめることができます。簡単に成功してしまうよりずっと豊かなものを手にするチャンスでもあるのです。
さあ、きょうも、自分の才能という樹に、水をやろう、栄養を与えよう。その地道な過程があれば、その樹は必ず豊かな果実をつける。
[文:村山 昇/イラスト:サカイシヤスシ]
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。