14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第2章|成長〉第4話
もちろん、勉強はその人を豊かにしていくのでそれ自体が目的となりえます。けれど、人は学んだことをなにかの役に立てたいと願うものです。自分がいま努力して勉強していることがどこにつながっているのか。それがわかると意欲がぐっとわいてきます。
そこにきて、由佳はボランティア活動に参加し、フェアトレードに強い関心を持ちました。彼女はフェアトレードのような仕事を通して社会に役立つことが、自分の人生のひとつの目的になりえるのではないかと感じたからです。そしてその目的を成しとげるには、英語や世界史をもっと学ばなければならない。こうした目的意識が心のなかに芽生えたことで、由佳は、がぜん、勉強に対しやる気が出てきました。
私たちは坂の上に立っています。坂の傾斜は、人生における試練や挑戦といった負荷です。私たちはその坂の途中にいろいろと目標を立てます。けれど、目標をただこえていくだけではしんどいので長続きしません。そこになにが必要か―――それが「坂の上の太陽」です。
「坂の上の太陽」とは目的であり、それをなぜやるかという意味です。太陽は坂道を照らし、エネルギーをくれます。フェアトレードに参加した由佳の心に生じた大きな変化は、実はこの太陽がのぼったことでした。坂の上にどんな太陽をのぼらせるか―――これは生きるうえでけっこう大きな問題です。
[文:村山 昇|イラスト:サカイシヤスシ]
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。