14歳から大人まで 生きることの根っこをかんがえる『ふだんの哲学』シリーズ 〈第2章|成長〉第4話
それに対し、目的とは、目標の先にある最終的にめざすことがらで、かつ、なぜそれをめざすのかという意味を含んだものです。簡単にまとめると───
〈目標〉=めざすべき数量・状態・しるし
〈目的〉=目標の先にある最終的に目めざすことがら
+意味(~のためにそれをやる)
先の例でみてみましょう。1日20kmの走りこみを〈目標〉にしてがんばっている人の〈目的〉はなんでしょう。半年後のマラソン大会で優勝して、自分の能力を証明するためかもしれません。また、○○検定で2級合格するのが〈目標〉という人はどうでしょう。その資格を取って、将来なにかの職業につくためというのが〈目的〉かもしれません。
あるいは、ある体操選手の例で説明してみましょう。彼は国内の大会で優勝したとき、インタビューで「いえ、この先がまだありますから」と答えました。彼にとって、国内優勝は〈目標〉の1つであって通過点にすぎない。さらなる大きな〈目標〉は世界選手権で優勝することです。彼にとって、そうした国内外での優勝の先にある〈目的〉とはなにか。それは4年に1度のオリンピックで金メダルを取り、みなに感動を与えるアスリートになりたいということです。
このように力強く自分の道を進んでいく人は、めざすべき状態を目標1、目標2、目標3と段階に分けて設け、その先に目的をすえています。逆に見れば、大きな目的を抱き、そのもとに目標を段階的に置いているとも言えます。
目的とは繰り返しますが、「~のために」という意味を含んだものです。自分がめざすことに意味を感じているというのは、とても大事なことです。なぜなら、人間は意味からエネルギーを湧かす動物だからです。
たとえば、あなたのクラスが、5日間、学校近くの川岸の空き缶拾いをすることになりました。クラス全体で1キログラムの缶を集めることが目標で、その量に達すれば1日の作業を終えることができます。このとき、最初の1、2日はがんばれるかもしれません。しかし、なんのためにその作業をするのかという意味を感じなければ、みな続けるのがいやになるでしょう。
ところが、その空き缶の収益が学校の設備充実に使われたり、近隣の人たちがきれいな川岸になってよろこんでいるという事実を知ったりすれば、やる気が出てきます。その作業に意味を感じる、つまり目的を持つようになったからです。
このように、目標と目的の両方がそろうと、人は具体的に、そして持続的にがんばることができます。しかし現実は、とりあえず目標に向かってがんばるけれど、とくに目的はないという場合が多いものです。そうすると、「結局、自分はなにをやりたい人間なんだ?」という根本的な問題がわいてきます。自分の努力はなんのためということがわからないので、迷いが出てくるのです。
由佳はおそらくその状態に迷い込んでいたのでしょう。これまで試験ごとに目標を決め、それをクリアすべく真面目に勉強してきた。ところが、勉強の目的、つまり勉強をする意味が見あたらないので、それへの意欲がなえていたわけです。
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キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。