それは国がサポートする外国人向けブラック雇用制度。その実態は今や諸外国からも糾弾されつつあるばかりか、必然的に急増している技能実習生の逃亡・失踪は不法就労に直結している。勇気をもって止めよう。
それでも最初の引き受け先よりましだと考え、借金を返すためにあえてリスクを冒して逃亡・失踪する実習生が後を絶たないのだ(中には最初から失踪するつもりで入国する実習生もいるだろう)。
当然、逃亡して別のところで働き始めた時点で技能実習ビザの条件を踏み外すことになり、日本の法律を破ってしまうことになる。一旦こうなるとまともなところは雇ってくれないので、この元実習生は「不法就労」の坂を転げ出す。
より稼ぎのよい職場を求めて転々とする過程で、不法就労外国人の一部は同族系の犯罪集団に組み込まれていく可能性も高まる。こうした集団は母国を同じくする点で結束力が高く、自分たちを受け容れなかった日本人に対してより凶悪な存在となりやすい。
つまり将来の日本社会における摩擦増や治安悪化を避けるための苦肉の策である今の技能実習制度は、現在の日本社会における外国人単純労働者の不法就労を促し、外国人犯罪集団への人材供給役を果たしているのだ。何という皮肉だろう。
これほど本来の(建前上の)趣旨と実態とがかけ離れ、かつメリットよりもデメリットのほうが数倍も大きくなっている制度は即刻打ち切るべきである。
「そんなことを言っても、人手不足の現場はどうするんだ」という声が聞こえてきそうである。ここでは、思い切って現実的な政策転換をした韓国の例が参考になる。
実は10年程前までの韓国は日本の外国人技能実習制度と似た制度を運用していたが、同様のジレンマに苦しんでいた。劣悪な労働環境・条件のせいで、既に雇った外国人には逃亡され、新規の外国人労働者は思ったほど集まらなかったのだ。
そこで、従来の民間主体の受け入れ体制から、政府が主体となった『雇用許可制度』へと180度転換したのだ。韓国人を対象に募集して集まらなかった職種のみ、国が外国人労働者を募集する。韓国人に対するのと同じ給与条件で、だ。
政府が責任をもって受け入れる外国人労働者を人材データベースに登録し、企業が希望する条件と合致する人材をその中から紹介するのだ。実際に働くようになってからのトラブルにも政府機関が間に入って対応する。
就労期間も(日本の3年間に対し)最長で9年8か月と、技能・ノウハウを習得するのに十分な長さだ。転職は(日本では認められていないが)韓国では3回まで認められている。
当事者の外国人労働者の視点から見て、日本と韓国のどちらに出稼ぎに行きたいと思うだろうか。送り出す外国政府としてはどうだろうか。答は明白だ。実際、日本への幻想が強い一部地域を除いて、アジアでの日本の「外国人技能実習生」の募集事業は韓国や台湾に完全に競り負けている、と我々は聞いている。
社会インフラ・制度
2015.07.29
2015.09.29
2015.11.11
2016.01.13
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2016.03.09
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2016.03.30
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/