新規事業に取り組む大企業の行動パターンに関する素朴な疑問シリーズ、その6つめは事業構想案の可視化のやり方のブレ。部門によって異なるどころか、同じ部門でも人によってバラバラ。しかも考察不足のせいもあって、何を言いたいのか分からないことさえある。
「ビジネスモデル・キャンバス」のような複雑で高等レベルの手法を勉強する前に、まずはこちらを習得して欲しい。できれば全社で共通的に使えるようにしておくことが望ましいと思う。
さて、先ほどの「ビジネスモデル・キャンバス」と「戦略キャンバス」の話を最後に論じよう。新規事業プロジェクトでこれらを可視化手法として挙げる人たちに、実際に図示させて説明させようとすると、残念ながら尻込みすることがほとんどだ。
実際のところ、こうした場面において、生まれたばかりのビジネスアイディアを共有するのに向いているわけでもない(誤解して欲しくないが、小生はこれらのツールに批判的というわけではない)。その訳を簡単に説明しよう。
まず、「ビジネスモデル・キャンバス」は本来的には事業構想全体の分析・検討ツールである。いわば企画書のエッセンスをコンパクトにまとめたようなものだ。したがって、思いついたアイディアに抜けがないよう、様々な観点から肉付けするのには最適である。ある程度検討が進んだ段階からは他の人への伝達ツールにもなる。
しかし、思いついたばかりの新しいビジネスモデルのアイディアを短時間で、ビジネスモデル・キャンバスに的確に表せる人はそういない。ある程度の時間を掛けるか、練習を重ねないと難しいだろう。小生のよく知っている企業では管理職研修で教えているそうだが、使いこなすまで行く人は少ないようだ。
そして、普通の人のビジネスモデル・キャンバスによる説明を聴いて、すぐに理解できる人はもっと少ない。何せ全然直観的でなく、文字だらけのブロックの組み合わせだから、読んでも各ブロック間のつながりがピンと来ないのだ。
よほどうまく説明されないと、内容を誤解しがちでもある。図そのものに意味を持たせる方法論ではないからだ。
なお正確には、ビジネスモデル・キャンバスはビジュアル的に色々と書き込んで進化させることもできる。そうなれば非常に有効なコミュニケーション・ツールになるが、短時間で描けるような絵心のある人は少ない(大体それならポンチ絵のほうが速いだろう)。
では戦略キャンバスはどうだろう。こちらを挙げた人は多分、全く分かっていないで思いつきで言ってみただけか、「ビジネスモデル・キャンバス」と混同しただけだと思われる。
戦略キャンバスは、新しいカテゴリーの商品・サービスの分析・検討ツールなのだ(もしくはコミュニケーション・ツールとして使うこともあろう)。新ビジネスモデル開発のためではない。この点を誤解している向きが不思議と多いようだが、明確に区別しておいたほうがよかろう。
新規事業
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2016.06.22
パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
「世界的戦略ファームのノウハウ」×「事業会社での事業開発実務」×「身銭での投資・起業経験」。 足掛け38年にわたりプライム上場企業を中心に300近いプロジェクトを主導。 ✅パスファインダーズ社は大企業・中堅企業向けの事業開発・事業戦略策定にフォーカスした戦略コンサルティング会社。AIとデータサイエンス技術によるDX化を支援する「ADXサービス」を展開中。https://www.pathfinders.co.jp/ ✅中小企業向けの経営戦略研究会『羅針盤倶楽部』の運営事務局も務めています。https://www.facebook.com/rashimbanclub/
