新規事業には4つのアプローチがある。「競争戦略」「新カテゴリー創出」「ビジネスモデル開発」「“From Scratch” 」である。
ただしここでいう「新カテゴリー創出アプローチ」は、「ブルー・オーシャン戦略」という特定の手法とは違って、より汎用的な手法を含むアプローチを指している。別段、戦略キャンバスやティッピング・ポイント・リーダーシップなどを使う必要はない。
むしろ大事なのは、新カテゴリーなので既存市場がなく、代替先市場と比較するだけになるため競争戦略アプローチに比べ市場分析は軽めで構わない反面、顧客価値の違いを注視することと、その仮説の検証が鍵となることだ。先進顧客との協創が有効である点も念頭に置いておくとよい。
第3は「ビジネスモデル開発アプローチ」である(「ビジネスモデル変革アプローチ」と呼んでもよい)。市場は既存だがビジネスモデルが新規の場合に、主に適用される。
商品・サービスのカテゴリー的には(自社にとっても世の中的にも)既存のものであっても、事業を成り立たせる仕組みが従来のものと違うことで、新しい価値を提供できたり強い競争力を持つことができたりするものである。もちろん、結果としてブルー・オーシャン的な新カテゴリーの商品・サービスが生まれることもよくある。
例とすると、製造小売アパレルであるSPAが登場したときはまさにそうだったし、アマゾンや楽天などの「ネット○○」が登場したときも新ビジネスモデルだった。見かけ上は地味な例でいうと、最近サッポロビールが小売と“専売”ビールを共同開発したのも実はそうである。
この「ビジネスモデル開発アプローチ」は、方法論的にはまだまだ十分体系化されたとは言い難いが、近年目覚ましく発展途上である。「ビジネスモデル・キャンバス」(これは開発手法というより整理手法といったほうが適切だが)が有名になってきているが、他にも様々な手法群がある(中には焼き直しや、無駄に細分化しただけと思われるものもあるが…)。
ビジネスモデルの主要要素の定義、それらをどう組み合わせることで新しいモデルが開発できるか、どういうプロセスで開発・展開できるのか等々、多様な事例研究と体系化の試みが行われている。小生もクライアントと共に新規事業プロジェクトで日々実践するのと並行して、事例や新しいモデルを有志の方々と研究している。
最後の4つめが「“From Scratch” アプローチ」である。市場も新規、ビジネスモデルも新規の場合に適用される。そのためスタートアップが好んで採用するアプローチでもある。
顧客自身も競合の存在もまだよく分かっていないことが多いため、市場分析は最も軽めで構わない。だから「確かめてみないと分からない」という態度が相応しい。その一方で、他のどのアプローチよりも、顧客のウォンツと価値が重要になると同時に難しいので、多層的検証が欠かせないことは強烈に意識する必要がある。
どれが一番難しいかと時に聞かれるが、第1を除けばどれも実現自体簡単ではないし、成功確率を考えると(競合が多い第1を含め)いずれも同様に難しい。だからといって新規事業に全く取り組まない会社に未来はない。経営環境や事業機会・自社資源との相性も考慮して、高度に判断するしかない。
(本記事は2012年12月5日に掲載されたものを再編集しております)
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パスファインダーズ株式会社 代表取締役 社長
パスファインダーズ社は少数精鋭の戦略コンサルティング会社です。「新規事業の開発・推進」「既存事業の改革」「業務改革」の3つを主テーマとした戦略コンサルティングを、ハンズオン・スタイルにて提供しております。https://www.pathfinders.co.jp/ 弊社は「フォーカス戦略」と「新規事業開発」の研究会『羅針盤倶楽部』の事務局も務めています。中小企業経営者の方々の参加を歓迎します。https://www.pathfinders.co.jp/rashimban/ 代表・日沖の最新著は『ベテラン幹部を納得させろ!~次世代のエースになるための6ステップ~』。本質に立ち返って効果的・効率的に仕事を進めるための、でも少し肩の力を抜いて読める本です。宜しければアマゾンにて検索ください(下記には他の書籍も紹介しています)。 https://www.pathfinders.co.jp/books/