LCCへの注目度が高まる中、「このレベルのサービスまでしか提供できません」という内容のスカイマーク・サービスコンセプトが波紋を呼んでいます。スカイマーク・サービスコンセプトから垣間見える航空会社の苦悩から、サービスの視点で学ぶべきことは何なのでしょうか?
■「事前期待のマネジメント」の参考例として
スカイマーク・サービスコンセプトの中には、例えばこんな項目があります。
・「お客様の荷物はお客様の責任においてご自身で収納をお願いいたします。(略)」
お客様が事前期待として「客室乗務員に荷物の収納を手伝ってもらえることは当然」と思っている場合、実際のサービスレベルと比較すると、その事前期待は大きすぎる(実績として期待に応えられない)ということになります。そこでこの項目を表記することで、「客室乗務員が手伝ってくれることは当然ではないんだ」という内容に事前期待をマネジメントしようとしています。
また、こんな項目もあります。
・「お客様に対しては従来の航空会社の客室乗務員のような丁寧な言葉使いを当社客室乗務員に義務付けておりません。客室乗務員の裁量に任せております。(略)」
・「客室乗務員のメイクやヘアスタイルやネイルアート等に関しては「自由」にしております。」
これはお客様が、言葉使いや服装について、「きっちりと統一されているべき」という事前期待を持っているのを、「多少のバラつきが生じるんだ」と認識して頂けるよう、事前期待をマネジメントしようとしています。
このように他のサービスにおいても、必要以上に膨らみ過ぎた事前期待を適切な大きさにマネジメントすることで、お客様の不満やクレームを避け、サービスに満足して頂きやすくする工夫ができるかもしれません。但し、事前期待を小さくし過ぎてしまうと、そもそも利用する気になって頂けないということになりますので、事前期待は「適切な大きさ」にマネジメントすることがポイントになります。
■ローコストとグッドサービスを両立させる
日本人はサービスに関して贅沢になり過ぎているという声もあります。今回の航空サービスの苦悩から、そんな一面が垣間見えたような気がします。だからと言って、安いからサービスレベルは低くて良いということになるのでしょうか?LCCのビジネスモデル成功のカギは、「いかに安定的な利用者数を確保するか」や「いかに付加サービスを販売できるか」だと言われています。そのためには、リピーターを獲得するためにお客様に大満足頂く事や、お客様に快く付加サービスを購入して頂くためにサービス品質を高めることが必要になってくるのではないかと思います。
今後、日本の航空業界での競争が激化する中で、たとえLCCであったとしても価格ではなくサービス品質で差別化をする必要性が出てくるかもしれません。その際には、アメリカを代表するLCCのジェットブルー航空のような「ローコストとグッドサービスは両立する」というサービスに転換できるかどうかも、今後の課題になってくることでしょう。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
サービスサイエンス・CS向上・サービス改革・品質向上
2013.02.13
2013.01.28
2012.11.13
2012.10.30
2012.06.21
2012.06.12
2012.06.05
2012.05.29
2012.04.03
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト
サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。 代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新