大垣共立銀行サービス改革のカギはサービスの定義

画像: Stig Nygaard

2012.03.13

経営・マネジメント

大垣共立銀行サービス改革のカギはサービスの定義

松井 拓己
松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

金融機関の顧客満足度ランキングで大手銀行を押さえ、常に上位の評価を獲得しているのが岐阜県の地方銀行の大垣共立銀行です。なぜ大垣共立銀行がこれほど高いCSが得られるサービスを実現できたのか?実はそのカギは「サービスの定義」にありそうです。

しかし、ただ単に「我々はサービス業だ」と掲げるだけで改革が実現できるというわけではありません。実はサービス改革のためには、「サービスの定義」自体を組織で共通認識として共有することが極めて重要になります。
ところで、「サービス」とは何なのでしょうか?いざ聞かれてみると、案外回答が難しいものです。

■「サービスの定義とは?」これがサービス改革の第一歩

サービスサイエンスにおいて、我々はサービスをこのように定義しています。
『人や構造物が発揮する機能で、ユーザーの事前期待に適合するものをサービスという』

この定義にはいくつもポイントがあるのですが、今回は代表的なものを2つ挙げます。
まず1つ目は、「人だけでなく、構造物もサービスを提供できる」ということです。例えばコインランドリーは、明らかに人はいませんがサービス業になります。銀行ではATMがこれに該当するかと思います。
そして2つ目、これが最も重要なのですが、「事前期待に適合するものをサービスという」ということです。では、事前期待に適合しないものは何なのか?それは「余計なお世話」であったり「無意味行為」「迷惑行為」といった認識をされてしまうということになります。
この定義からも、これまでの記事で度々お話しさせて頂いた「事前期待を把握し、それに応える」ということがいかに重要であるかはお分かり頂けるのではないかと思います。

こういったサービスの定義をしっかりと組織全員で共有すると、その後のサービスの議論が格段にしやすくなるのです。この「サービスの定義」をご理解頂いた上で、再度大垣共立銀行のサービスに視点を戻してみると、このサービス改革がいかに「サービスの定義」を捉えたものであるかが分かります。

頭取の土屋氏が揚げた「我々は金融業では無くてサービス業だ」という言葉ですが、これをサービスの定義を踏まえて解釈してみると、例えばこんな理解になるかもしれません。「我々は、スタッフや銀行組織、ATMや銀行空間などをフル活用して、お客様の事前期待に適合する機能を発揮できるよう、サービス変革をしなければならない。」そして、サービス変革の結果生み出されたサービス(年中無休、移動式ATM、説明員配備など)は、お客様の事前期待に適合した気の利いたサービスとなっています。その結果、地方銀行ながら、毎年全国でトップクラスの顧客満足を獲得することができているのだと思います。

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松井 拓己

松井サービスコンサルティング ・サービスサイエンティスト

サービス改革の専門家として、業種を問わず数々の企業を支援。国や自治体の外部委員・アドバイザー、日本サービス大賞の選考委員、東京工業大学サービスイノベーションコース非常勤講師、サービス学会理事、サービス研究会のコーディネーター、企業の社外取締役、なども務める。           代表著書:日本の優れたサービス1―選ばれ続ける6つのポイント、日本の優れたサービス2―6つの壁を乗り越える変革力、サービスイノベーション実践論ーサービスモデルで考える7つの経営革新

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