東大が入学時期の春から秋への移行を検討しているという。調達・購買には関係のない話と思われるかもしれない。秋に調達せよという話でもない。東大の姿勢から、今の日本の課題と我われ調達・購買や経営に携わる者が学べることについて見ていく。
たまたま今回は変化させるべきではないという判断になったかもしれないが、時間が経てば、大抵は、サプライヤの状況や貴社の需要パターンが変わっていたり、技術革新があったりして、改善機会が生じているものである。この改善機会は、新しい調達・購買方法を検討してみなければ、決して見つけることができないものである。
日本は調達・購買部門が仕事をしにくい国だと感じる。なぜなら、結果よりも問題が生じないことが優先させる組織が多い文化だからだ。何か新しいことに挑戦しようとすれば、必ずと言ってよいほど、横槍が入る。まして、挑戦した結果、些細な問題でも生じようものなら「それ見たことか」とよってたかって叩かれる。こんな環境の中で新しいことに挑戦しようというのはよほど奇特な人間だ。
新しいことに挑戦すれば、問題が生じるのは当たり前。その内の多くは、本当の問題ではなく、単なる慣れの問題であったりする。そうした些細な感覚の違いを恐れ、目の前の改善機会を見過ごしていけば、挑戦を恐れない人、組織に大きく後れを取るのは明らかだ。
東大の秋入学の移行は果たせるのだろうか?この取り組みについて指摘されている懸念は、実施しても起こらないかもしれない問題や、実施しても成果が思うように出ないというもので、明らかな制度的欠陥ではない。
世の中には、やってみたら問題ではなかった、やってみなければ分からない問題が多々ある。東日本大震災の影響による部材の調達難の時に、その影響範囲があまりにも大きく、何が不足するのかが良く分からず、各社工場を動かしながら、それらを確かめていったのは記憶に新しいところ。困難を乗り越えるには、困難に挑戦し、そこで明らかになった問題を一つひとつ解決していくしかない。是非、東大には検討だけでなく、実際の挑戦をしてほしい。
日本はもっと挑戦する人間を讃え、挑戦した上での失敗に寛容になるべきだ。秋入学にすることで日本の大学が抱える問題がすべて解決する訳ではなかろうが、結果の如何に関わらず、批判を受けやすいポジションにある東大が果敢に挑戦をするというその事を以って、この取り組みを応援したい。
中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長
調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、日本における調達・購買業務とそのマネジメントの確立に向け、それらの理論化、体系化を行なっている。
コーポレートサイト: http://www.samuraisourcing.com/
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます