経済産業省と自動車、素材メーカ首脳らが参加する「自動車戦略研究会」がメーカの垣根を越えた自動車部品の共通化を進める報告書を公表した。 果たして、自動車部品の共通化は国主導で進めるべき話なのだろうか? そもそもメーカの垣根を超えた自動車部品の共通化は進めるべきものだろうか?
「経済産業省と自動車、素材メーカー首脳らが参加する『自動車戦略研究会』は10日、メーカーの垣根を越えた自動車部品の共通化を進める報告書を正式に公表した。
報告書には、東日本大震災で自動車部品のサプライチェーンが寸断されたことを教訓に、自動車各社や自動車部品、電機、電池、化学品などの業界団体が集まって共通化に向けた協議を進める協議会を経産省が主導して設置することを明記しているという。(出所:MSN産経ニュース 2011.6.10)」
果たして、自動車部品の共通化は国主導で進めるべき話なのだろうか?
経産省は、部品の共通化を、震災のみならず下請け支援のためという名目で押し進めようとしている。メーカが競合との違いを打ち出すために車種ごとに部品の仕様を細かく分け、部品の仕様が増えすぎたことが下請けの体力を奪っているとし、そのためにも部品の共通化が必要としている。
しかし、部品メーカ、下請け企業にとって、部品の共通化の先にあるのは体力勝負の血みどろの競争だ。日本の自動車産業の強みは、「すり合わせ型」のモノづくりにあると言われる。すり合わせ型のモノづくりとは、部品やモジュールの設計を互いに調整しながらすり合わせて製品化していくものだ。すり合わせ型の場合、欧州部品メーカの規模やアジアの新興部品メーカの積極的な設備投資という手法は通用せず、日本の部品メーカが優位性を保つことができた。
部品の共通化の目指す所は、部品そのものや他の部品、モジュールとの接続方法を標準化し、これらの間でのすり合わせの必要性をできる限り少なくすること。それにより、様々なメーカの部品の切り替えを簡単にできるようにすることだ。つまり、対象としている部品を、すり合わせ型のモノづくりから、パソコンなどに見られる「組み合わせ型」のモノづくりに転換しようというものだ。
買い手企業から見れば、すり合わせに掛かる調整コストがなくなり、かつ一つの部品を提供できるサプライヤも増え、競争が活性化され、よりコスト低減の機会も増える。災害などであるサプライヤからの供給が断絶しても、代替ルートを確保しやすいといったリスクマネジメント、クライシスマネジメント上のメリットもある。
しかし、サプライヤにしてみたら、とんでもない話である。自分達の特徴を消され、血みどろの戦いの市場に無理矢理追い込まれるのである。余計なお世話だ。
この自動車戦略研究会には、この提言により死活問題を迫られる部品メーカ、下請け企業は参加していない。Tier1と呼ばれる1次下請けが数社入っているに過ぎず、その先のTier2、Tier3といわれるサプライヤはここに参加していない。こんな所で自社の命運がきめられるとしたら、それは随分と悲しい話だ。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
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