経済産業省が個別の電気製品の構造や材料を細かく定めた安全基準を大幅に簡素化する。この改正が目指す所は、国が製品の設計、仕様まで規制する方法から、最低限遵守すべき性能(結果)のみを規定する方向に転換するという、正にコペルニクス的転回とでもいうべき変更だ。この方針変更が変化を迫るのは売り手企業だけではない。企業であれ消費者であれこれら製品のすべての買い手にも変化が求めらている。
「経済産業省は個別の電気製品の構造や材料を細かく定めた安全基準を大幅に簡素化する。5月末の産業構造審議会で現在の安全基準を見直す方針を確認、2013年をめどに電気用品安全法の政省令を改正する。(出所:2011年5月24日 日本経済新聞 1面)」
改正の目的は、裁量範囲を広げることで、企業の創造性を支えることや、国内規制の国際規制との整合を高め、グローバル競争に晒されている企業の負担を軽減し、グローバル展開をしやすくすることにある。
この電気用品安全法に限らず、日本のこれまでの規制の考え方は、国がすべてを知っており、国が箸の上げ下げまで細かく指導するというものだ。たとえば、電気用品安全法では、部品と部品の間に置く絶縁体の種類や形状や、冷蔵庫では1分間100ボルトの電圧に耐えるとするなど、電気製品454品目を対象に細かく技術基準を規定している。
今回の見直しでは、この品目分類を家庭用調理器具、ランプなど10程度に集約。その上で「漏電しない」「高齢者に配慮する」など安全確保に必要な性能の基準だけを定める。この基準を満たせば、安全確保の手段は問われないようになる。
これまでの日本独自の細かく技術基準を定める方法は、製品の安全確保には有効だったかもしれない。しかし、この方法では、製品の開発・設計に大きな制約を受けると共に、新素材や新技術などの採用がなかなか進まず、独創的な製品が生まれにくくなる。
「欧州や韓国などは自由度の高いしくみで、企業の創意工夫を後押しして(出所:同上)」おり、日本企業はこうした企業と日本の規制に合わせて自由度の低い製品で、もしくは日本市場向けと海外市場向けの複数の仕様の開発による開発コスト負担を抱えて競争しなければならなかった。
今回の見直しで国内規制の国際規制との整合を図ることにより、こうした海外市場での日本企業の競争上の足かせが少なくなることが期待される。海外市場での成否が日本企業の生存・成長に不可欠となっており、それを支援する方向で規制変更がなされるのは望ましいことである。
「経産省は、ライターなどを規制する『消費生活用製品安全法』、ガスコンロなどを対象にした『ガス事業法』、ふろがまなどの『液化石油ガス保安法』の3法も同じように見直す方針(出所:同上)」との事で、これは経産省の工業製品の安全管理の方針が、国が製品の設計、仕様まで規制する方法から、その技術的達成方法を問わずに、最低限遵守すべき性能(結果)のみを規定する方向に大きく転換したのではないかと思われる。正に、製品安全性管理のコペルニクス的転回とでもいうべき変更だ。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
週刊 戦略調達 vol.100~
2011.07.06
2011.06.29
2011.06.23
2011.06.16
2011.06.07
2011.06.01
2011.05.25
2011.05.17
2011.05.10
株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます