東大が入学時期の春から秋への移行を検討しているという。調達・購買には関係のない話と思われるかもしれない。秋に調達せよという話でもない。東大の姿勢から、今の日本の課題と我われ調達・購買や経営に携わる者が学べることについて見ていく。
東京大学が入学時期の春から秋への移行を検討しているという。海外大学との留学生交換を円滑にし、同大の国際化を加速させるとともに、学生に入学までに社会経験を積ませることが狙いという。
この取り組みはあまりにも大胆であるが故に、加えて日本の大学の中でも注目されやすい東大が取り組むということから、高校卒業から入学までの半年間のギャップイヤーをどの様に過ごすのか、卒業後から就職までの半年間はどうするのか、入学時期をずらしただけで学生の海外留学志向は高まるのか、桜の咲く中での卒業、入学は日本の文化だなど様々な批判が寄せられるだろう。
課題を挙げることは簡単だ。一方で、日本の大学のあり方が問題を抱えているのも事実だ。日本の学生の内向き志向、海外学生の日本の大学への関心の低さ、激化する就職活動と学業とのバランス。今の春入学一辺倒のやり方が本当にこのままで良いかは疑問だ。
我われは、高度成長期を経た日本企業の世界的成功から、一転して、少子高齢化による国内市場の縮小とリーマンショック以降の世界経済のハーフエコノミーへの転換への対応という大きな社会・経済構造の転換を迫られている。しかし、あまりにも問題が大きすぎて、まだ問題解決の糸口が見えていない感がある。
東大の今回の取り組みは、その影響力の大きさを考えると、日本が目指さなければならない社会・経済構造の転換に向けた挑戦の一つと考えられる。現在の日本が抱える閉塞状況は、これ位思い切った挑戦をしなければ打破することはできないだろう。
調達・購買においても挑戦が必要だ。日々の調達・購買部門の方々との仕事を通じて「調達とは新しいことへの挑戦」と感じている。
わざわざ調達・購買部門を通さずとも、要求部門が直接サプライヤとコンタクトすればモノは買える。ではなぜ、わざわざ調達・購買部門を通すのか。
それは要求部門が「最善のモノを求める」のに対して、調達・購買部門がそれを取得する上での「最善の調達・購買方法を求める」という所に存在意義があると考えられる。
「最善の調達・購買方法を求める」とは、今までの取引条件、購買方法、取引先が最善のものなのか、これまでの仕様の切り方が最適なのかを常に問いかけることだ。
逆説的になるが、今までの調達・購買方法が最善であったとしても、それが最善であるか否かは、それを疑い、新しい調達・購買方法を検討してみて初めて分かるものである。
調達・購買部門以外の人から見れば、なぜ現状で上手くいっているものをわざわざ見直さなければいけないのかと思われるかもしれない。しかし、それをすることが調達・購買部門の価値の源泉なのだ。見直した結果、たまたま現状が最適で、これまでの取引条件、取引先を変更させないことも多々あるかもしれない。それは決してムダな作業ではなく、会社として、改善機会がそこにあるのか否かの検証は常に誰かが行わなければならない。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます