まだ福島第1原子力発電所の事故処理は予断を許さない。また、東京電力管内の電力需給ギャップ解消の目途も立っていない。こうした中で、我々個々人が事態の収束、復興に向け一つにまとまりかけているのに、マスコミがいたずらに人々の不安を煽り、そうした機運に水を差している。脚色がかったニュース番組やセンセーショナルな見出しを見る度に哀しい気持ちになる。
東京電力や政府の事故対応を批判するだけの知識があるならば、直接、東京電力や政府と掛け合って、こうした問題に直面している人々を動かし事態を改善すればよい。問題から離れた安全な所で何を言っても、現場に居る人間は誰も耳を貸さない。
問題のスケールが違いすぎて例としてはあまり良くないが、筆者はソリューションビジネスに携わる中で、火を吹き崩壊していくプロジェクトを見てきたり、迷走するプロジェクトの火消しとして投入されたりしてきた。そうした経験で得られた教訓は、火を吹いたプロジェクトにおいて、それがそのまま崩壊するのか、そこから立ち直るかを分けるものは、プロジェクトマネジメントやリスクマネジメントといった手法ではなく、プロジェクトリーダーやメンバーの中に腹を括って不退転の覚悟で臨む人間が居るか居ないかの違いだ。
プロジェクトが崩壊したり迷走したりするのは、プロジェクトリーダーのマネジメント能力の欠如もあるが、プロジェクトが破たんするような酷い状況になるのは、ちょっと困難な状況になった時に、プロジェクト参画者がどんどん逃げ出していくことに起因するものが多い。時には、プロジェクトリーダーがさっさと逃げ出してしまうこともある。それでも、メンバーの中に逃げ出さずに困難に立ち向かう人が居れば、かなり惨憺たる状況からでも大抵の事態は立ち直っていく。
火を吹いたプロジェクトに火消しとして後から投入された時は少しやっかいだ。なぜなら、そうした時には四面楚歌であることが殆どだからだ。プロジェクト参画者は、迷走の責任をリーダーや自分以外の誰かに押し付け、既にその者を追い出すことに成功している。しかし、それでは問題は解決しない。真摯に問題に向き合うよりも、また誰かに問題解決が遅れている責任を誰かに押し付けた方が楽なので、そうしたプロジェクトでは常に生贄を探している。それが、外部の会社の人間なら尚更だ。火消しで放り込まれたプロジェクトリーダーの置かれた立場はざっとこんなところだ。
こうした時には、さっさと腹を括ってしまった方がよい。幸いなことに、事態がここまで悪化したのは自分の責任ではない。置かれた状況の中で、小さくても問題解決に資することでできることがあるならば、それを片付けていく。他にやることはないのだから、それをやるしかない。やってはいけないのは、そこから逃げ出そうとすることだ。そうした気持ちはすぐに周囲に見透かされ、そうした時に集団は寄ってたかってあなたに追い打ちをかけるだろう。途中で逃げ出すならば、最初から引き受けないことだ。引き受けた以上、逃げ出すことはオプションから外す。成果が出なくて、そのポジションから外れるか否かは、自分ではなく、自分をその任に充てている者に判断を任せる。上から成果が出ない、小さいと言われても仕方がない。そうした状況に自分を投入したのは他ならぬ上司だからだ。上司も聖人君子でない。文句を言うだけの上司に限って、マネジメント能力がなかったりする。文句を言うだけで、具体的な指示もなく、交代もさせられないのであれば、それはその人にも解決の術がなく、あなただけが頼りということだ。火消しを任せられる人間なんてそうそういるものでもない。自信を持って任にあたっていれば良い。危機においてはウジウジ悩んだり、保身を考えたりしている暇はない。とにかく、行動し、結果を見て、思った結果が出なければ、また違う手を打つしかない。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます