まだ福島第1原子力発電所の事故処理は予断を許さない。また、東京電力管内の電力需給ギャップ解消の目途も立っていない。こうした中で、我々個々人が事態の収束、復興に向け一つにまとまりかけているのに、マスコミがいたずらに人々の不安を煽り、そうした機運に水を差している。脚色がかったニュース番組やセンセーショナルな見出しを見る度に哀しい気持ちになる。
この度の東北地方太平洋沖地震により、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様とその家族の方々に心よりお見舞い申し上げます。
皆様の安全と一刻も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。
確かに、福島第1原子力発電所での炉心溶解や建屋爆発は、これ程の大規模の地震や津波を考慮していなかった人災の側面はある。また、東京電力や政府の対応も後手々々に回っている感がある。
それでも、敢えて言いたい。「今はまだ危機状況にある。危機への対応に必要なのは、心を一にする者だけで危機の対処に集中すること。悪者探しや災害の犯人探しをするにはまだ早い。責任追及や原因究明は危機が去ってからにすべき。日本の危機に瀕して、困難への対処に意を一つに合わせられずに、他者を煽るだけならば、問題解決の足手まといになるだけなので、何もせず黙っているべきである」と。
なぜなら、そうした悪者探しをする動きが混乱に拍車を掛けるからだ。東京電力や政府の福島第1原子力発電所の事故対応が後手々々に回ったのも、マスコミから横やりや揚げ足取りが次々と入り、その対応に貴重な時間、スタッフやリソースが割かれたことが、事態の悪化に更に拍車を掛けていたように見受けられる。事態が沈静化した後には、今後のこうした事態への対処の方法を明確にするために、東電や政府の責任追及だけでなく、誰が彼らの行動の妨げになったのか、危機時の情報開示のあり方についても検証すべきと考える。
とはいえ、漏れ出てくる情報からは、事故に際しての東京電力の判断は危機意識の欠如した悠長なもので、政府の介入がなければ、もっと大惨事になっていたかもしれない。或いは、政府の介入がなくとも、被災状況が明らかになり、東電のコミュニケーションや意思決定チャネルが落着きを取り戻せるような環境があれば、もっと迅速に問題解決が行われ、今のような長期的な影響が出ない形で事態が収束していたかもしれない。事の真相は今後の検証を待たなければならないが、それでも、今はまだそうした検証に入る段階ではなく、事故を収束させることに東京電力、行政、我々民間のあらゆるリソースを集結させる段階にまだあると考える。
少なくとも今言えるのは、こうした危機においては、現場を離れた安全な所から外野がどれだけあれこれ言おうが、問題解決には少しも役に立たないということだ。それどころか、そうした人間が情報を要求し、現場の貴重なリソースをその対応に分散させ、無責任な発言で更に多くの人を間違った方向に扇動していく。こうした無用な事態だけは回避すべきだ。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます