本田技研工業がグリーン購買ガイドラインを改定した。企業活動全領域におけるCO2を含む温室効果ガス排出量の管理をサプライヤに求めるといった優れているが取引先にはかなり厳しいものになりそうだ。 恐らく、ありこちでベストプラクティスとして「何れの企業も真似すべき」ものとして取り上げられていくことだろう。今回は、他企業にとってのこのホンダのグリーン購買ガイドラインの正しい位置づけについて見ていこう。
自動車業界は、20世紀をまたいだ100年以上、石油燃料で動く内燃機関を動力とする技術的基本構造は変わっていない。その間、先進国市場の非常に高い安全、品質の要求に応えるべく、サプライチェーンのかなりの末端の部分まで参加企業を固定し、垂直統合する形で発展してきた。
サプライチェーンを構成する企業の入れ替えが少ないため、構成企業の活動のきめ細かい管理をすることは、他の業種に比べて非常に少ないコストで実現できる。そうすることで、更にサプライチェーン構成企業の切り替えコストが高まっても、そもそもサプライチェーンの構成企業を切り替えることが少ないため、さほど問題にならない。
他の業種で、サプライヤとここまでタイトなパートナーシップを築いた方が効果的という調達・購買品というのは非常に限定的である。自動車業界ですら、動力のモータへの転換によるモジュール化、品質とコストのバランスをよりコスト重視に置かなければならない新興国市場が事業の中心となる時に、今後もすべての材でこれまでのようなタイトなパートナーシップを組むべきかは不透明だ。
環境負荷の低減は重要だが、企業人として最も重視すべきは、持続的成長である。環境を重視するあまりお客様が求める価値、コストで製品・サービスを提供できなくなっては意味がない。
オフィス用品通販のアスクルは、梱包資材を不要にすべく配送に繰り返し使える折りたたみコンテナや通い袋を使用する「ECO-TURN配送」を2009年から実施するなど環境経営の先進企業であるが、そのアスクルの岩田代表取締役社長は、「大切なのは、支持を得ている商品から環境配慮製品に変えていくこと。いくら環境に配慮しても、売れない製品は自己満足にすぎない。結果として商品の競争力が高まる。(出所:「岩田彰一郎氏:売れない環境配慮製品は無意味(日経エコロジー 2011年1月号)」ときっぱり述べている。
企業の存在意義は、お客様が認めて対価を払って頂けるような価値を利益が出る形で提供することだ。環境負荷をなくしていかなければならないのは、企業経営における前提条件であって、存在意義ではない。
確かに、ホンダのグリーン購買ガイドラインは素晴らしい。恐らく、事業運営の現場を知らないマスコミやコンサルタントがベストプラクティスとして「何れの企業も導入すべき」ものとして取り上げられていくことだろう。だけれど、自動車業界の購買ガイドラインを他の業界にそのまま持ってきても、要求水準が高すぎ、かつ目指すべき方向が違っているので、単なるお題目に終わってしまう。真面目にホンダの真似をしようとすればする程、取引先を固定化してしまい、お客様に評価して頂ける商品・サービスを提供するのに不可欠な組織的な調達・購買能力を落としてしまい、ひどい時には、企業そのものが消滅してしまうことになりかねない。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます