政府税制調査会が、地球温暖化対策税(環境税)として化石燃料にかける石油石炭税の税率の引き上げを検討している。燃料ごとに、二酸化炭素(CO2)排出量に応じ、引き上げ幅が異なる。
それぞれの引き上げ幅は、
ガソリン等の原油・石油製品:約790円/kl、39%
LPG:約910円/t、84%
LNG:約810円/t、75%
石炭:約700円/t、100%
2011年度の導入を目指している。
この増税によって得られる税収は、家庭や事業者向けの省エネ機器、運輸部門での電気自動車の導入支援などに充てられる予定。
個人的には、税金で需要を創出することは難しいと考えているので、税収の使途については賛成できないが、石油石炭税の増税はこれら化石燃料の使用に対する見事なディスインセンティブ(抑止効果)となるだろう。自分への影響がよく分からない複雑なインセンティブでは人の行動は変えられない。本当に人の行動を変えたいのであれば、今回の環境税のように、影響を与えたい対象から見て分かりやすく直接的なものにする必要がある。
石油製品にしても、LNGや石炭などの発電燃料にしても、非常に需要家の裾野が広い。上記のような大幅なコスト増が迫られるとなれば、我われ需要家の行動を変える強いインセンティブとなる。今回の税率引き上げが実現するとなれば、多くの需要家が使用量の削減、代替品へのシフトといった工夫をこらすだろう。
石油石炭税であれば燃料の消費量に直接連動する。温暖化ガスのような測定が困難なものを無理やり測定する必要もない。税金であれば、強制力もあり、温暖化ガスの排出枠の設定の調整に苦労することもない。排出権取引のようにスキームの構築に多大な費用を掛けることもない。環境税ならばより効率的な制度の維持運営が可能ということだ。
メキシコのカンクンで開かれていた国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)では、相変わらず先進国と途上国、京都議定書で削減義務を負う日本、ロシア、カナダと自分達が削減義務を負わない京都議定書の枠組みを維持したい米中印との対立で結局まとまらずに終わった。京都議定書のような複雑なスキームではなく、今回の環境税のようなシンプルなものを目指した方がまとまりやすく、実効性も高いのではないか。
インセンティブは分かりやすい方が良い。制度はシンプルな方が良い。その維持運営のコストは掛けないに越したことはない。今回の環境税が成立すれば、環境経営の大きなインセンティブになると思われる。
中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長
調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、調達・購買活動から環境経営に貢献する方法は数多くあると、環境負荷を低減する商品・サービスの開発やそれを支える優良なサプライヤの紹介など環境調達に関する情報発信活動を行っている。
コーポレートサイト: http://www.samuraisourcing.com/
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます