住宅業界で、太陽光発電システムや家庭用燃料電池といったシステム、機器に頼らず敬エネルギーを実現した敬エネルギー住宅の開発の取組が進んでいる。今回は、この事例から今後の商品・サービス企画・設計のあり方を学ぶ。
たとえば、「創建ホームズは内断熱と外断熱を組み合わせ、断熱・機密性能を従来より4割高め、暖房した熱を逃がさないよう排気熱を回収する換気をつけた住宅を販売している。これらにより、エアコン1台で家全体の温度を快適に保てるという。また、建物内部への日射と風の流れを解析し、夏の日差しはひさしで遮り、冬の日差しは室内に取り入れる構造を採用したり、吹き抜けや高い位置に置く窓で、ゆるやかな風の流れを作り出す。
アキュラホームは、長い軒の出を周囲に配置して日差しを制御、年間を通して直射日光が入る東西側には熱を遮断するガラス、冬のみ日があたりやすくなる南側は通常の複層ガラスにして、日射熱を効率的に取り入れる。また、地面近くに配した窓と高い位置にある窓とでリビングの風を自然排出し、室内のドアの上に通風スペースを設け、家全体に風の流れをつくる。(参考:日本経済新聞 2010年12月15日 17面)」
これらの取組に共通しているのは、太陽光発電や蓄電池、燃料電池といった先端の環境対応機器利用を前面に押し出す大手住宅メーカの商品と異なり、採光や日射熱の取り込み、高気密・高断熱による室温の平準化、室内に自然の力による風の流れを利用した空気循環など自然の力を上手く生かして敬エネルギーを実現する設計上の工夫だ。
住宅に限らず、製品・システムの品質、コスト低減には、できる限り部品点数、構成要素を減らし、企画・設計をシンプルにする必要がある。部品、構成要素の削減がコスト低減だけでなく、品質や信頼性の向上にもつながるのは、構成要素間の予期せぬ干渉を減らしたり、個々の構成要素の不良、故障による製品・システム全体への影響を防げたりするからだ。構成要素が減れば、それだけ個々の要素の故障発生も減り、メンテナンスコストも引き下げられる。たとえば、アキュラホームの商品の場合、敬エネルギーという新しい価値を住宅に加えながらも、価格は4LDKで1,280万円~と従来と同じに抑えられている。
環境負荷の低減という新しい価値の提供、品質・信頼性の確保、より低価格での価値の提供というのは、住宅メーカに限らず、どの業界に属する企業でも共通の課題だ。
今回の住宅メーカの取組における、
「コンセプトは環境に、企画・設計はシンプルに」
という姿勢は、どの企業もこれからの製品・サービス開発で参考にすべきものである。中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます