地球温暖化対策の国際的枠組みを話し合うCOP16は、2012年末で期限が切れる京都議定書以降の国際的な枠組みについて結論を出さず、議論を1年間継続させることで決着した。COP16の議論の流れを作ったものの一つに日本政府代表の強い姿勢があった。日本は今、地球温暖化対策を始め、様々な国際的枠組みの話し合いの中で困難な状況に置かれている。そうした状況の中で、自分の主張を貫くすべについて検討する。
地球温暖化対策の国際的枠組みを話し合う国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)は、2012年末で期限が切れる京都議定書以降の国際的な枠組みについて結論を出さず、議論を1年間継続させることで決着した。
COP16の議論の流れを作ったものの一つに、日本の交渉団の初日の全体会合での「日本はいかなる条件、状況においても京都議定書の枠組みでの目標設定には応じない(Japan will not inscribe its target under the Kyoto Protocol on any conditions or under any circumstances)」という発言に象徴される日本政府代表の強い姿勢があっただろう。
COP16での日本政府代表の頑な態度に対し、世界中から批判の声が相次いだ。「温かい人間関係の中やさしい一員(「アメリカ人と日本人」今井康夫著)」を是とする日本人は、他者から批判を受ける事に非常に臆病だ。ましてや自分の立場が少数派となれば尚更だ。それでも、日本政府代表は強い姿勢を貫いた。そして、今回のCOP16の最終決議で、京都議定書で非常に難しい立場に置かれた日本の状況を覆す機会を得るにまで至った。
あるポジション(姿勢)を取ることは、どの様なポジションであろうと反発を得る。それが正しくてもだ。多数派が常に正しいとは限らない。各国が京都議定書を延長しようとしていたのは、地球環境を保護しようという善意ではなく、それが自分にとって都合が良いからに過ぎない。国別で温暖化ガス排出量の上位3位の中国、米国、インドは京都議定書の枠組みでは温暖化ガス削減の義務を負わない。京都議定書で削減義務を負うEUが京都議定書の延長を支持するのも善意ではなく、各国の削減義務が一時的にでもなくなってしまえば、これまで積極的に推進してきた排出権取引市場が一気に崩壊してしまうからだ。
2009年の温暖化ガスの排出量の構成比を見ると、中国24%、米国19%、インド5%、ロシア5%、日本4%、EU全域13%(出典:BP Statistical Review of World Energy 2010)となっており、中国、米国が削減義務を負わない国際的枠組みは実効性が無いことが見て取れる。
善意とは非常にはかなく脆く頼りないもの。マクロミルが2010年7月に全国20~59才の男女を対象に行った環境意識に関する調査(有効回答数1000名)では、環境について「かなり意識している」「意識している」「どちらかといえば意識している」の回答の合計は65%と2年前の調査の75%から約10ポイント減少している。日本人の生活環境が苦しくなる、先行きが見えなくなる中で、環境意識は低下している。自分の生活もままならない中で地球環境に慮っている余裕はないといったところだろう。それは仕方のないことでなかろうか。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます