北陸先端技術大学院大学(JAIST)がシリコン太陽電池を安価に製造する技術を開発したと発表した。この技術は太陽電池の生産コストを約3分の1にできるという優れもの。 今回は、環境分野とコスト低減の関係についてみていこう。
北陸先端技術大学院大学(JAIST)がシリコン太陽電池を安価に製造する技術を開発したと発表した。JAISTは、半導体や太陽電池の材料となるシリコンに着目し、新たな溶媒の発見等により、シリコン材料をインクのように液状で扱えるようにした「Siインク」を開発、それを基板に塗布するだけで太陽電池を作れるようにした。
これまで世界で生産・販売されている太陽電池の約90%は結晶シリコン太陽電池で、大規模な真空装置を使って製造するため生産コストが嵩み、発電コストが49円kWhと現在の家庭用電気料金の17~23円/kWhを上回る高コストであることが、太陽電池普及の妨げとなる要因の一つであった。
今回開発された製法により、太陽電池の生産コストを約3分の1にできるということだが、JAISTでは、太陽電池の更なる普及には、LNG火力発電並みの7~8円kWhに引き下げる必要があるとみている。
シリコンは、これまで結晶質の固体材料、薄膜形成用に気体(ガス)材料が材料として利用されてきたが、JAISTによると、Siの固体やガス材料を使う限り、太陽電池の発電コストをLNG火力発電のそれ並みにするような抜本的な生産効率の向上は極めて難しい状況にあるという。材料の歩留まり、製造プロセス、設備・装置の簡略化などによる生産効率の大幅な向上には、既存技術の延長上にはない画期的な技術が必要で、そのため、JAISTは、これまで非常に困難であるとされてきた液体シリコンによる半導体や太陽電池の作成の研究に取り組んできたとのことだ。
敬資源、敬エネルギーを実現する環境分野は、これまで解決できなかった問題を解決する必要がある。その際によくある障害は、問題を解決する技術そのものは存在するものの、新しい技術であるが故に市場も小さいか存在せず、製法、製造技術もこなれておらず、生産コストが相当掛かり、結局、市場性が無くなってしまうというものである。
市場が確立すれば、スケールメリットや経験曲線で生産コストは下げられるかもしれない。しかし、価格が高ければ信用の無い新しい技術は売れない。特に、信用や実績が重んじられるBtoBでは尚更だ。これでは正に、鶏が先か卵が先かの堂々巡りの議論で終わってしまう。
新商品、新技術の普及の鍵はいかに買い手がそれを採用するハードルを下げられるかだ。当然、導入コストはそのハードルの大きな要素の一つである。たとえば、今回取り上げた太陽電池は、地球環境への負荷低減、地球温暖化防止に向け、イノベーションならびに成長が望まれる分野だが、現時点では、行政からの補助金がなければ普及が進まない状況だ。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます