エコタイヤの原料となる、JSRのS-SBR(溶液重合スチレンブタジエンゴム)の増産が進んでいる。JSRの躍進から、環境経営の成功に必要な要件を学ぶ。
JSRが、現地企業と合弁でタイでS-SBR(溶液重合スチレンブタジエンゴム)の製造プラントを新設することで基本合意したと発表した。
S-SBRは、タイヤや工業用品用途に使用される高機能合成ゴムで、最近は、エコタイヤと呼ばれる低燃費タイヤ向けへの需要が世界的に急拡大している。
エコタイヤとはタイヤの転がり抵抗を少なくしたタイヤで、同じ燃料でもより長くタイヤが転がるものを指す。それによって燃費が減らせるというのがメーカのうたい文句だ。
最近では、環境意識の高まりやタイヤの低燃費性能の格付け制度の普及を背景にエコタイヤの需要が伸びており、JSRの主力工場である四日市工場においても2011年11月の完成を目指し、現在の生産能力3万5千tの7割にあたる2万5千tの増強を実施中。また、欧州においても2009年から現地企業との間で3万トン/年の引取り権契約に基づいた生産を開始している。タイでの合弁工場では、年間生産能力は最大10万tを予定しており、これがフル稼動すれば、JSRの供給能力は、現在の2倍強にあたる年19万tに高まる。
S-SBRは、アジア域内需要のみならず、アジアでの欧米向けを中心とする輸出用低燃費タイヤの生産拡大に伴い、急速に伸長している。現在同社の国内及び欧州工場はフル稼動の状況が続いており、今回のタイでの製造工場の建設は、こうした需要増に応えるもの。
JSRによると、同社のS-SBRは、高度なポリマー技術によって、タイヤのグリップ性能やハンドリング性能など他の性能を犠牲にすることなく低燃費化が実現できることから、高性能な低燃費タイヤ用素材として国内外のタイヤメーカーから高く評価されているという。JSRは低燃費タイヤ用のゴムで約3割のシェアを押さえており、世界首位のメーカ。
JSRのこの成功は、エコタイヤが単なる気分としての「エコ」なタイヤではなく、低燃費や転がり性能がタイヤメーカや消費者からタイヤの基本性能、品質として認められるようになったからではないか。
JSRの躍進を見ていると、環境をお客様から評価される製品・サービスの基本性能、品質として認められる程、実体のあるもの、実利のあるものに高めていくことが、環境経営を成立させうる要件と感じる。
中ノ森 清訓/株式会社 戦略調達 代表取締役社長
調達・購買業務に関わる代行・アウトソーシング、システム導入、コンサルティングを通じて、お客様の「最善の調達・購買」を実現することにより、調達・購買コスト、物流費用、経費削減を支援する傍ら、日本における調達・購買業務とそのマネジメントの確立に向け、それらの理論化、体系化を行なっている。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます