コンセント単位で消費電力を見える化、節電へ - 富士通研究所

2011.04.14

経営・マネジメント

コンセント単位で消費電力を見える化、節電へ - 富士通研究所

中ノ森 清訓
株式会社 戦略調達 代表取締役社長

東京電力管内の夏場の需給ギャップの目処が立っていないのは頭の痛い所だが、富士通グループの研究開発機関、富士通研究所はそのギャップ解消の一助になりそうな電源タップ(延長コンセント)を開発、4月から発売する。

このタップは、富士通研究所が開発した業界最小クラスの電力センサーを内蔵し、オフィスでのコンセント単位の消費電力を1Wから見える化する。コンセント単位なので、それに接続する機器毎の電力消費を継続的に把握でき、機器毎の待機電力も含めて、機器や人単位での使用電力を明らかにすることで、業務の生産性を損なう一律的なやり方ではなく、ムダな電力利用に絞ったきめ細かい手を検討することが可能になる。同社によると、これまでのコンセント単位で消費電力を収集できる電力センサーは、サーバルームへの設置を想定し外形サイズを考慮せずに設計され、サイズが大きすぎてオフィスには不向きであったという。

また、これまでのコンセント単位の電力消費をデジタル表示するプラグタイプのセンサーは、ネットワーク経由でデータを収集する機能を持たず、表示データを手作業で集める必要があったが、今回開発されたものは、別売の中継器を接続すると電力消費データをネットワーク経由で閲覧・収集でき、各人の予定表と連動させ、業務と消費電力を関連付けて表示させられる。それにより、離席時のパソコンやディスプレイ、電気スタンドの消し忘れなどのムダを明らかにすることで、省エネについての意識づけを徹底するといった使い方も用意されている。

省エネルギー、省資源、コスト削減だけでなく、それ以外の業務、たとえば売上向上も含めて、何かを改善するには、そもそも何が「問題」で、その問題の「原因」は何かを明らかにしなければ改善は始まらない。節電であれば、自社や自分がどれ位の電力消費をしているのかを知らなければ、それが問題とすべき状況なのかも分からない。仮に、節電のために電力消費を抑えようということになったとしても、誰がどの設備でどういう理由でそれだけの電力消費をしているのかが分からなければ、それが削ってよいものかどうか、どういう対策が打てるものなのかも分からない。

状況を見える化するもう一つのメリットは、対策の成果が簡単に見えるようになることで、実際に対策に携わる人々が自分の努力が効果があるということを実感し、必要なアクションを自発的に継続するようになることだ。改善の努力は、時として、手間を増やさなければならない場合がある。たとえ手間が増えなくても、人間は今までやっていないことをやらなければならないだけで嫌がるものだ。しかし、その手間、行動によって目に見えて成果が出るとなると、そうしたアクションそのものが楽しくなり、楽しみながら同じ動作を繰り返す内に、やがてそれが習慣となり、無意識の内にあるべき行動を取るようになる。実際にこの電源タップを利用したところ、富士通研究所の一部オフィスで約20%の、富士通の一部オフィスでは約15%の消費電力削減に成功したという。これらの効果については、消費電力の少ない設備への交換をした等の対策についての断りが特にないので、恐らく、個々人の消費電力量を単純に見える化するだけで、ムダに気づいた人々が自発的に使っていない時のPC等の設備の電源を落としたことだけでもたらされたものであろう。問題がこれまで手つかずであった時には、投資などせずとも簡単にできることをやるだけでこれだけの成果を挙げられることは多々あるものだ。将来的には、改善を定着させるには、ポカよけのように強制的に型にはめる方法が効果的な場合があり、センサーで消費電力を見極め、一定時間の待機時間が来たら、自動的に電源を落とすようなアプリケーションを開発するという手もあるかもしれない。

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中ノ森 清訓

株式会社 戦略調達 代表取締役社長

コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供していきます

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