米調査会社のアイサプライがiPadのテアダウン結果を発表しました。その結果からは、特に、大企業においては、これまでのモノづくりのパラダイム、調達・購買管理論が通用しなくなっていることが伺えます。 あなたは、この調達・購買管理論の前提がまったく変わってきていることへの備えは出来ていますか?
すると、日本の大企業が取りうる今後のモノづくりが目指すべき方向性としては、これまでの強みを活かした(1)インテグラル型×ニッチ市場か、これまでの市場を活かした(2)組み立て(モジュラー)型×マス市場の何れかの方向になります。
産業機械はどうだ、コマツみたいに世界で圧倒的に強い日本企業はまだあるぞといった反論はあるかもしれませんが、工作・産業機械でも、韓国・中国企業の追い上げがきつくなっています。コマツは、ある意味特殊で、一般的な傾向の話をしている時に、例外ケースを出されてもの感があります。反対に、そのような主張をされる方には、コマツ以外で、グローバルにマス市場を抑えているインテグラル型企業を相当数上げて頂きたいと思います。
実際には、現在のコマツの成功は、お客様に代わって、建機の稼動状況をモニタリングし、適切なメンテナンスを行なうというサービス化によるものであって、これもインテグラル型のモノづくりによる品質だけでは、お客様に価値を認めてもらえなくなっていることの別の形での表れと言えます。
加えて、大企業はその固定費負担からニッチ市場に向きませんので、やはり、今後の日本の大企業のモノづくりの方向性としては、モジュラー型×マス市場への対応がメインになるのではないでしょうか?
モノづくりの方向性がそのように変わるのであれば、調達・購買もモノづくりを支える一つの機能ですので、その方向性に合わせて変化する必要があります。
これは、中長期的な資源高と相まって、高度成長期に活躍された自動車・電機メーカの出身者の方々が培ってきた、買い手企業の圧倒的立場や気心の知れたサプライヤとの長期的関係に頼った擦り合わせによる段階的なコスト低減を前提としたこれまでの調達・購買管理論が終焉を迎えたことを意味します。
これからは、買い手企業とは少なくとも対等、状況によっては、あまたあるお客様候補の内の中・下位の一社とこちらを見、それぞれの取引で合理的でないと取引をしない海外サプライヤを相手に、グローバル最適調達を、お客様の変化に合わせてスピーディに実現することを前提としたまったく新しい調達・購買管理論に基づく調達・購買が必要とされているのです。
「あなたは、この調達・購買管理論の前提がまったく変わってきていることへの備えは出来ていますか?」
iPadのテアダウン結果は、そのように問いかけているように見えます。
※本稿は、弊社が発行しているメルマガ「週刊 戦略調達」の記事を編集・加工したものです。「週刊 戦略調達」は、調達・購買業務とそのマネジメント、コスト削減・経費削減のヒントを提供すべく、調達・購買業務のマネジメント、戦略調達のプロフェッショナルが、最新のトピックスから、調達・購買業務におけるトレンド、業務への影響を解説したものです。最近の記事のバックナンバーの閲覧やご購読は、http://samuraisourcing.com/knowledge/weekly/ にて行えます。
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
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