パナソニックが、ホテルなどの法人向け事業でグループの幅広い商品を一括納入し、保守まで請け負う「まるごと事業」に乗り出しました。 今回は、意図的か結果的にかは分かりませんが、このパナソニックのまるごと事業に秘められた巧妙な罠について明らかにしていきます。
分かり易い例で言えば、事務用品のアスクルや消費者向けのコンビニが、簡単にモノが買えるという機能を提供することで、価格競争を回避しようとしているのと同じことです。
ただ、設備購買が事務用品や消費者の購買と大きく異なるのは、その金額が非常に大きいという事です。また、パナソニックの目指すところは、中間流通ではなく、グループの営業窓口の一本化ですから、品揃えにも限界があります。その時に便利さをとるべきか、調達・購買能力の維持を取るべきかは、各社の判断にもよりますが、弊社は圧倒的に後者の立場です。
パナソニックグループ各社の方には申し訳ないのですが、パナソニック、パナソニック電工、三洋電機がどれだけ優れた会社でも、それらが提供するあらゆる製品・サービスがすべてにおいてそれぞれの市場の中でベストである、ベストであり続けるということは考えられません。
事務用品や消費者の購買であれば、多少の品質・コストの差は目をつぶって便利さを取るという判断はあるかと思いますが、設備購買でそうした判断はあり得ないのではないでしょうか。
ただ、設備購買の難しい所は、購入頻度が少ないため、設備購買ができる担当者の維持、確保、育成が非常に難しいという所にあります。求められる能力は非常に高いのに、それが発揮される機会は少なく、人材育成も難しい。そうした中で、買い手企業はついついエンジニアリング会社やゼネコンに頼ってきた。その過程で、仕様・価格査定能力を失っていく。それと同じ臭いを、どうしてもこのスキームには感じてしまいます。
パナソニックが悪事をしているとはまったく思いません。いや、むしろ、売り手企業としては、本当に正しいことをしている。純粋にお客様のために、より良い製品・サービスを提供したいという事からでも、同じ戦略に行き当たります。
それが自社にとって本当にベストかどうか評価できる能力を、我われ買い手企業は持ち続けなければならない、ただそれだけ。パナソニックの今回の戦略に我われが乗るのが正しいのか、乗らないのが正しいのかを、的確に評価する。ただそれだけです。
パナソニックのことですから、この営業窓口には、さっぱりとした印象の非常に優秀な切れ者の営業マンが何人も張り付き、多くの企業が絡め取られてしまうことが予想されます。
天下のパナソニックで製品・サービスの質も高く、営業マンもパリパリで優秀。その丸抱えで何が問題かと思われたかもしれませんが、こうした時に、自分達が仕様・価格査定能力を失っているか否かを、どれだけの企業、経営者が理解しているでしょうか?
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株式会社 戦略調達 代表取締役社長
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