BCMを人事・総務の立場から考える「ケーススタディ」の教材のようなものを書いてみました。日々の生活を振り返る道具にしてみて下さい。
Jさんの家に着いたとき、そこには焼け焦げたアパートだけが残り、逃げ出した住民が自分の荷物を運び出していた。
「あのー。ここの部屋にいた方はどうしました?」 Fさんはそっと語りかけた。
「あぁ、彼ね。今朝救出はされたけど、全身やけどをして病院へ運ばれたよ。きっと助からないだろうね。うちの子供を可愛がってくれるいい人だったんだよ・・・。」
こちらも搬送先が分からず、後で消防署へ確認することにして、Kさんの下へ向かった。
「最初の犠牲者か・・・。Jさん・・・。」
Fさんに同行していた部下はいたたまれない気持ちになり、泣き出しそうになっていた。
「Kさんの安否確認までは耐えろよ。俺だって辛いんだ。お前の役目はAさんへの報告だろ。」 Fさんは、そっと部下に話して、そのまま黙り込んだ。
Kさんの家は、高層マンションの15階にあった。
「Kさーん。いますかー。」
「誰ですか?ドアが歪んで外に出られないんです。」
いわゆる耐震偽装のマンションなのだろう・・・。
「このマンションは、震度7まで耐えられますって売っていたんですよ。詐欺ですよこれー。」
Fさんはほっとしたのも束の間、ドアをこじ開けようとした。
「Kさーん。これ無理だね。窓の格子を壊していいかな?」
「それだけはしたくなかったんだけど、仕方ないですね。」
窓の格子に3人でぶら下がり、徐々に曲げて避難路を作った。
「俺の住宅ローンを誰が払うんだよ・・・」 Kさんはつぶやいた。
「Fさん、あとは××小学校にいるIさんに会いに行きましょう。」
これで安否不明は、HさんとJさんの2名になった。
『Fさん、対応ありがとう。気をつけて戻ってきてください。HさんとJさんは救急車に乗ったことを確認したので、落ち着いてから消防署へ問い合わせましょう。』
Aさんからのメールを受け取ったFさんは、会社へ向けた車を走らせた。
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これから会社の「復旧」から「復興」へ移行することになります。
災害が発生してから、1日で全社員の安否が確認できるとは限りませんし、そんな都合のよいことにはならないでしょう。
でも、リスクマネジメントをいかに効率的に行うのかという点は、発生する前にどれだけ準備していたかにかかっています。
なかなか人事・総務部門向けのリスクマネジメントは書籍もセミナーもなく、そもそも商品化しても参加してもらえないという提供する側の論理が働いているのは仕方ないことなのかもしれません。
しかし、本当に災害となった場合、一般的なリスクマネジメント研修はあまり役に立たないことも多く、日常からのイメージトレーニングをもっともっと大切にして頂きたいと思うことしきり・・・なのです。
自社の災害対策について、一度考える機会を作って頂ければ幸いです。
【災害発生編 おしまい】
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