BCMを人事・総務の立場から考える「ケーススタディ」の教材のようなものを書いてみました。日々の生活を振り返る道具にしてみて下さい。
「緊急連絡網」を介して、ぞくぞくと社員からメールが届いた。
出社した社員とあわせて72名。
社長も役員との連絡が取れ、役員の負傷者は3名。残りの方々は自宅周辺で被災者の救出を手伝っているとのこと。
人事総務部長も、奥さんが箪笥の下敷きになったとのことで、今は自宅近くの病院にいることが分かった。
「あと8名か・・・」
単身者5名と家族がいる3名・・・。家族がいる社員については、家族の誰かがそのうち連絡をくれるだろうと考え、単身者の安否だけが懸念事項として残った。
「Eさん、連絡が取れない社員が5名いるんだ・・・。一人一人確認に行きたいんだけど、どうしたらいい?」
Aさんは、なんとも言えない絶望感を感じながら、Eさんに聞いた。
「じゃぁ、車で巡回しよう。さっきコンビニに食料を買いに行った奴が街の地図を買ってきたから、それにルートを書き込んで。救急病院までのルートは確認してあるけど、それ以外はまだ未確認だし、たしか西のバイパスは災害時は自衛隊の通行のために閉鎖されるはずだから。慎重にね。あと、社長が走ってきたルートを聞いておいて。」
「Eさん、わかった。5人の住所はここ。地図でいうと、この5箇所だ。病院を抜けていくルートを優先にすると、ここから順に時計回りで進むといいだろうね。で、誰が行く?」
「そろそろ同期のFが来る頃なんだけどな・・・。」
「Eさん、車持ってきたよ。さすがにアウトドア用に使っているとはいえ、瓦礫を乗り越えるのは大変だったよ。街全体がクロカンみたいだった。」
そんな不謹慎な会話がなされながらも、設計部のFさんは社内きってのアウトドアマニアで、近所での救助活動を中断して出社してもらった。
「Fさ、これが地図。安否確認が取れていない社員が5名。このルートで回って欲しいんだけど。」
「ああ、わかったよ。で、誰が乗っていくの?」
「お前の部の若手を一人乗せていくから。携帯電話2台あれば連絡もできるだろう。現場の判断はFに任せるから、とにかく生きていることを確認してきてくれ。」
「・・・。生きていればね・・・。」Fのなんとも言えない返事が周囲に静寂をもたらした。
「じゃぁ、ついでに、道路が陥没しているかもしれないから、運転は気を付けてな。よろしく。」
社長を中心とする災害対策本部を作り会社の周囲では災害復旧と救助、そして炊き出しがスタートした。そして社員の72名の安否確認が完了し、残りの社員の家に直接向かうことになった。
手の空いている社員は、会社周辺の道路の確保のために清掃を開始し、瓦礫の撤去と付近住民との対話を行い、生活必需品の不足状況の確認を行った。
既に15時を回り、地震発生から8時間が経過。
残り5人の社員が潰されているのであれば絶望的な時間が経過したことになる・・・。
BCM-1
2008.08.14
2008.08.12
2008.08.10
2008.08.10
2008.08.09
2008.08.09
2008.07.29