前回、マーケティングにおける重要な要素として完全製品(Complete Product)と意思疎通(Communication)を「マーケティングの2C」として紹介した。ここでは完全製品について解説したい。
完全製品とは、全てを備えた製品という意味で「完全」と呼んでいる。世の中に完全なものなどないと考えれば、実際には存在し得ないものだが、メーカーやサービス提供者が完全な製品の提供を目指していく姿勢や態度も含めた、広い意味での消費者、ユーザー、買い手に対する製品提供の形態やあり方を「完全製品」と定義している。完全製品は「完璧製品」(Perfect Product)ではない。
完全製品の中核にあるのは、消費者が本質的に求める便益である。例えば、パソコンを購入する時に、我々消費者はパソコンの機器を求めるのではなく「Eメールによる友達との通信」、「Webサイトにおける情報検索」、あるいは「仕事における各種文書作成」などを求めることになるだろう。これらが「中核便益」である。このような便益を満たすことができるのなら、購入するものが結果的にパソコンでなくても良いはずである。
次に、具体的な製品の形、サービスのあり方がある。パソコンの例で説明すれば、液晶のスクリーン、キーボード、マウスなどが具体的な製品である。これらが「基本製品」である。消費者が実際に購入するのは基本製品である。
さらに、消費者が期待する製品がある。パソコンの例で言えば、「製品が壊れないこと」、「バッテリーが長持ちすること」、「処理速度が速いこと」などが期待されることであろう。これらが「期待された製品」となる。
さらに、付属的な製品や追加的なサービスに対して消費者は価値を見出す。パソコンに関して言えば「ソフトウェアの円滑なアップグレード」、「豊富なコンテンツ利用の可能性」などが消費者にとっての付加価値となるだろう。これらが「拡大された製品」である。
想像力を働かせれば、製品の将来の可能性として「潜在製品」を考案することが出来るはずである。パソコンの例で言えば、音声認識機能の付いた時計サイズのパソコンや人間と同じ思考能力を持ったロボットなどがパソコンの「潜在製品」になることだろう。
「完全製品」とは、このような製品の5つの次元を、消費者の中核便益を起点として満たし続けるための市場調査、技術開発、企画・開発、製造、運営管理、価格設定、販売・流通の管理など、製品に関わる総合的な計画と実行、また、そのための姿勢や態度を反映したものである。
【V.スピリット No.20より】
V.スピリット 総集編
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